5Gは、LTEよりも多くの周波数帯を使う。24~39GHz帯の「ミリ波」と、2.5~4.9GHz帯の「ミッドバンドTDD」、そしてLTEでも使っている0.6~2.6GHz帯に5G NR(New Radio)を導入した「ローバンドFDD」の3レイヤに分けられる。
2022年7月20日に開催された「Nokia Connected Future 2022」で同社の最新の取り組みについて講演した製品管理部門責任者のブライアン・チョー氏は、下の図を示しながら各レイヤの役割と使い分けについて説明。「最も重要なのがミッドバンドで、5Gのカバレッジを広げられる」と話した。
5Gで利用する周波数帯
多くの通信事業者がこのミッドバンドを主力として5Gエリアを展開しており、「さらにカバレッジを広げるためにローバンドFDDを用いる。そして、次のステップとしてTDDとFDDのキャリアアグリゲーション(CA)をする」流れになっているという。
その成功例として挙げたのが、北米の通信事業者であるT-Mobile USAだ。
高速化の効果はわずかでも、カバレッジは大幅増
T-Mobile USAは当初、2.5GHz帯(ミッドバンドTDD)で5Gエリアを展開した後、「同じセルサイトに600MHz帯のFDDを追加してカバレッジを拡大した」(チョー氏)。
ノキアのRAN製品戦略について講演するノキア 製品管理部門責任者のブライアン・チョー氏
さらに、次のステップとして600MHz帯と2.5GHz帯を束ねて使うCAを米国全土に展開している。2022年1月の同社の発表によれば、帯域幅は600MHz帯が最大20MHz幅、2.5GHz帯が最大100MHz幅となっている。
この結果、米PC Magazineの調査「Fastest Mobile Networks 2021」による平均ダウンロード速度で、T-Mobile USAはAT&TとVerizonを抜いて1位を獲得した(下図表)。
T-Mobile USAにおけるCAの効果
CAと言えば、このように複数の帯域をまとめて使うことによる高速化が注目されるが、チョー氏によれば、5GのCAにはそれを凌ぐメリットがあるという。「ミッドバンドTDDで十分に高速なのに、そこにFDDを加えても速度的にはそれほど意味がない」と、CAによる高速化の効果はかなり限定的だ。
それよりも、「ローバンドFDDをアップリンク(上り通信)に使うことで、ミッドバンドTDDのカバレッジを広げられる」ことこそ、CAの最大のメリットになると同氏は指摘した。ローバンドに5G NRを導入すれば、それ自体が5Gカバレッジを広げるのに役立つが、さらに、ミッドバンドTDDのカバレッジも広げられるという。
T-Moblieの場合は、CAの導入後にミッドバンドTDD(2.5GHz帯)のカバレッジが30%も拡大したそうだ。