3.1.4 「それってSNSに似ているね」から生まれたNexti
具体策を検討するにあたり、最初に着目したのが、社内システムの中でも最も頻繁に使われている「電子電話帳システム」でした。これは従来、冊子として配布されていた社員電話帳をWeb化したもので、社員の氏名や組織名などをキーにして、当該社員の所属や役職、電話番号、ビル名などを検索できるシステムでした。
このシステムの個人ページに顔写真を掲載したり、社員が自分の得意分野や社外の人脈、趣味、出身地などを自由に記載できる項目を追加することができれば、社員の「人となり」がよく分かる社内インフラになるのでは、という議論が起こりました。
しかし、既存の社内システムを変更するとなると、社内の関連部署との調整に時間がかかり、希望する変更要件に様々な制約が生じることが予想され、実現性やスピード、効果の観点から多くの課題が横たわっていました。
そんな折、メンバーのひとりが「それってSNSに似ているね」とつぶやいたのです。SNSであれば各社員のプロフィールを公開・参照できる上、日記やコミュニティで自由に考えを表明できる仕掛けも備えています。また、仲間リストによって社内の人脈を可視化することも可能です。
こうした議論をしていた2005年末には、ちょうどmixiなどのSNSが世間で話題になりつつありました。そのため、「社内版mixiを立ち上げる」というキャッチフレーズは、経営陣に対しても分かりやすいだろうという“読み”ができました。
このような経緯を経て、リスペクターズはセクショナリズムを打破するための手段として社内SNSを構築することにしたのです。
3.1.5 社長の了解を得ていざ船出へ
WGの意思決定機関であるステアリングコミッティには、当時の副社長(現社長)をはじめ、各部門を代表する役員5人が参加していました。2005年12月にWGの最終プレゼンテーションを実施し、その結果、WG参加者全員による投票によって、リスペクターズはステアリングコミッティと他のチームから最多の票を得ました。
さらに2006年1月、全社として予算執行の了解を得るため、リスペクターズはNTTデータの社風や組織、現状の課題認識に照らし、NTTデータならではの“味付け”を含めた社内SNSの具体的な実施案を練り上げ、社長を筆頭に30名近くの経営幹部に対して提案しました。
プレゼンテーション終了後、社長から「ぜひ若い人の感性で社員がアクセスしたくなるような楽しいサイトを作ってほしい」という趣旨のコメントがありました。続いて副社長や常務、取締役からも好意的な反応を得ることができ、企画案は承認されました。
当時、経営層の多くはIT業界の企業とはいえ、mixiをはじめとするSNSについて、言葉を耳にすることはあっても自分でアカウントを持って実際にサービスを体感している人はほとんどいませんでした。そこでリスペクターズは、SNSという言葉やサービスそのものにこだわり過ぎないように留意しました。例えば、役員全員にとって身近な社内インフラである「電子電話帳」を例に挙げ、「電子電話帳の個人ページに社員の写真を貼ったり、得意分野や趣味などのプロフィール項目を自由に編集できるようにしたり、社員が発言できるブログや掲示板の機能を追加したようなサービスを社内で展開したい」といった切り口で社内SNSの具体像を説明していきました。