「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る《3-1》「セクショナリズムの壁」を打破するために生まれたNexti――NTTデータ流ソーシャルテクノロジー

「Twitter」や「SNS」に代表されるソーシャルテクノロジーが、企業でも使われ始めた。厳しい経営環境を乗り切るために、組織へ組み込み、コミュニケーションの活性化に役立てようとする企業も現れている。本連載では、2009年のダボス会議で「持続可能な100社」に選ばれたNTTデータの取り組みを中心に、ソーシャルテクノロジーのメリットから活用のポイントを分かりやすく紹介する。

3.1.4 「それってSNSに似ているね」から生まれたNexti

具体策を検討するにあたり、最初に着目したのが、社内システムの中でも最も頻繁に使われている「電子電話帳システム」でした。これは従来、冊子として配布されていた社員電話帳をWeb化したもので、社員の氏名や組織名などをキーにして、当該社員の所属や役職、電話番号、ビル名などを検索できるシステムでした。

このシステムの個人ページに顔写真を掲載したり、社員が自分の得意分野や社外の人脈、趣味、出身地などを自由に記載できる項目を追加することができれば、社員の「人となり」がよく分かる社内インフラになるのでは、という議論が起こりました。

しかし、既存の社内システムを変更するとなると、社内の関連部署との調整に時間がかかり、希望する変更要件に様々な制約が生じることが予想され、実現性やスピード、効果の観点から多くの課題が横たわっていました。

そんな折、メンバーのひとりが「それってSNSに似ているね」とつぶやいたのです。SNSであれば各社員のプロフィールを公開・参照できる上、日記やコミュニティで自由に考えを表明できる仕掛けも備えています。また、仲間リストによって社内の人脈を可視化することも可能です。

こうした議論をしていた2005年末には、ちょうどmixiなどのSNSが世間で話題になりつつありました。そのため、「社内版mixiを立ち上げる」というキャッチフレーズは、経営陣に対しても分かりやすいだろうという“読み”ができました。

このような経緯を経て、リスペクターズはセクショナリズムを打破するための手段として社内SNSを構築することにしたのです。

3.1.5 社長の了解を得ていざ船出へ

WGの意思決定機関であるステアリングコミッティには、当時の副社長(現社長)をはじめ、各部門を代表する役員5人が参加していました。2005年12月にWGの最終プレゼンテーションを実施し、その結果、WG参加者全員による投票によって、リスペクターズはステアリングコミッティと他のチームから最多の票を得ました。

さらに2006年1月、全社として予算執行の了解を得るため、リスペクターズはNTTデータの社風や組織、現状の課題認識に照らし、NTTデータならではの“味付け”を含めた社内SNSの具体的な実施案を練り上げ、社長を筆頭に30名近くの経営幹部に対して提案しました。

プレゼンテーション終了後、社長から「ぜひ若い人の感性で社員がアクセスしたくなるような楽しいサイトを作ってほしい」という趣旨のコメントがありました。続いて副社長や常務、取締役からも好意的な反応を得ることができ、企画案は承認されました。

当時、経営層の多くはIT業界の企業とはいえ、mixiをはじめとするSNSについて、言葉を耳にすることはあっても自分でアカウントを持って実際にサービスを体感している人はほとんどいませんでした。そこでリスペクターズは、SNSという言葉やサービスそのものにこだわり過ぎないように留意しました。例えば、役員全員にとって身近な社内インフラである「電子電話帳」を例に挙げ、「電子電話帳の個人ページに社員の写真を貼ったり、得意分野や趣味などのプロフィール項目を自由に編集できるようにしたり、社員が発言できるブログや掲示板の機能を追加したようなサービスを社内で展開したい」といった切り口で社内SNSの具体像を説明していきました。

本連載は、2010年1月にリックテレコムから発行されたソリューションIT新書『NTTデータ流ソーシャルテクノロジー ~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~』(著者・Nexti運営メンバー有志)を転載したものです。

鈴木宏史(すずき・こうし)、豊島やよい(とよしま・やよい)

鈴木宏史
株式会社NTTデータ 第一公共システム事業本部
1999年、NTTデータ入社。入社以来、自治体系システムを担当分野として、営業及びシステム開発に従事する。Nextiには2006年2月より参画し、全体企画及びユーザー対応等を担当する。また、幹事長として合宿や忘年会等のイベントを仕切っている。

豊島やよい
株式会社NTTデータ 営業企画部
1998年、NTTデータ通信入社。SEとして官公庁向け電子申請システムの開発等を手がけた後、航空・空港業界の営業・マーケティング、新規ビジネスの立ち上げを経て、現部署に異動。全社営業力強化を目標に、前線の営業担当者向けの営業改革施策立案・運用に携わる。本書内の「新・行動改革WG」に参加。Nexti立ち上げメンバーとして、的場聡弘氏とともに「こころざし」を起草。また「3行の利用規定」の起案やユーザー対応など、技術力を共感力で補う立ち位置で活動している。

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