NTTデータは2006年4月、大企業病のひとつ「セクショナリズム」の打破を目指し、社内SNS「Nexti」(ネクスティ)を稼働させました。
稼働してまもなく、社員間のクチコミだけであっという間に登録者数が増加し、2日で500名、1週間で1,000名の社員が参加。2010年1月現在、登録者数9,300名、コミュニティ数1,000を誇る、国内最大規模の社内SNSに成長しています。その規模もさることながら、稼働してから3年を経過した現在でも、日記の投稿数は1日に100件、社長も積極的に書き込み、1日に1回アクセスするユーザーが全体の10%という賑わいを見せています。
非公式な取り組みから始まったNextiは、今やNTTデータにとってなくてはならないサービスとして認知されつつあります。ソーシャルネットワーキングが企業経営の一助となった一例として、Nextiの軌跡と成功の秘訣を追ってみます。
3.1.1 きっかけは新経営ビジョンを浸透させる方策案作り
1988年にNTTから分離独立した当時と比べると、外部環境や技術、事業範囲……NTTデータを取り巻く状況は大きく様変わりしました。これらを受けて2005年6月、NTTデータは今後の1020年を見据えた新たなグループ経営ビジョン「OUR VISION」と、その実現に向けた行動規範「行動ガイドライン」を策定しました(図3-1参照)。そして、「ビジョンは社員一人ひとりが実践してはじめて意味があるもの」との認識に基づき、社員の目線でビジョンと「行動ガイドライン」の浸透策検討を目的とした取り組みとして、「新・行動改革WG(ワーキンググループ)」を2005年の秋に立ち上げました。
図3-1 OUR VISIONと行動ガイドライン |
このWGは全社員を対象に公募したもので、新入社員から40歳後半までの幅広い層の社員が自ら手を挙げ、66名が集いました。66名が8グループに分かれ、10個の「行動ガイドライン」の中からグループで取り組みたいものをひとつ選択し、全社員がそのガイドラインに即した行動を自律的に取れるようにするための、具体的な方策案を検討・提案するという進め方をしました。
その結成された8グループのうちのひとつが「リスペクターズ」です。この名称には、「社員一人ひとりが、人間として、社員として、相手に対するリスペクト(尊敬・敬意)の精神を持つことが大切だ」という思いが込められています。リスペクターズは、10番目の行動ガイドラインである「セクショナリズムを排し、仲間の知恵と力を合わせます(チームワーク)」を取り上げ、「セクショナリズム打破」に向けた方策案作りに取り組むことになりました。その理由は、メンバー全員が少なからず社内のセクショナリズムに起因する問題点を感じていたこと。そして議論を重ねるうちに、この10番目の行動ガイドラインのテーマである「チームワーク」こそが、残り9つのガイドラインの根幹をなす最重要概念だと考えたからです(図3-2参照)。
図3-2 10個のガイドラインの中央にチームワークが存在 |