携帯4社のインフラ大作戦[第3回]【KDDI】WiMAX・LTE・固定など総動員で「データ津波」に備える!

今春までに携帯各社の40Mbpsクラスのサービスが出揃うことで、モバイルデータ通信市場の様相は一変する。連載「携帯4社のインフラ大作戦」の第3回は、KDDIのインフラ戦略を見る。

「携帯電話のハンドセットではauが一番速くなる」――。10月18日に行われた2010年度冬春モデルの発表会で、KDDI次期社長の田中孝司専務(当時)は、11月から運用する新システム「WIN HIGH SPEED」を、こうアピールした。

WIN HIGH SPEEDは、下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsのデータ通信が可能なKDDI(au)の主力データ通信システム、CDMA2000 EV-DO Rev.Aの搬送波を最大3本束ねることで高速化を実現するもの。Rev.Aの機能拡張版である「EVDOマルチキャリア」という技術が使われている。3波以上のRev.A搬送波が実装されている基地局のエリアでは下り最大9.2Mbps、上り最大5.5Mbps、2波運用局では下り6.1Mbps、上り最大3.7Mbpsを可能にする。

KDDIは、このWIN HIGH SPEEDを携帯電話/スマートフォン向けのみに提供し、データ通信専用端末向けには提供しない。また、あくまで現行サービスの「増速」の扱いであるため料金などに変更はない。対応端末は11月に発売されたiidaブランドの「X-RAY」とソニー・エリクソン「S005」、12月発売のパンテック製スマートフォン「IS06」など6機種が発表されている。

下り最大9.2Mbpsのデータ通信が可能なこれらは、最速で7.2Mbpsの他社のHSPA端末をしのぐもの。2011年末にドコモがLTE対応ハンドセットを投入するまでは、「日本で一番速い携帯電話/スマートフォン」の座を維持する可能性が高い。

WIN HIGH SPEEDのエリアは1400区市町村に

WIN HIGH SPEEDの提供エリアは、開始時点で下り9.2Mbpsと6.1Mbpsのエリアを合わせ約1400区市町村、人口カバー率で9割に相当する、かなり広範な地域で使えるようになっている。これはWIN HIGH SPEEDが、Rev.Aの搬送波が2波以上運用されている既存基地局のソフトウェア更新で、容易に導入できるためだ。

このうち下り最大9.2Mbpsのサービスが利用できるのは、全国の主要都市とその周辺で整備されている2GHz帯基地局のカバーエリアだ。全国をカバーする基盤ネットワークとして整備中の新800MHz帯の基地局しかないエリアは最大6.1Mbpsにとどまる。

KDDIは2006年から「800MHz帯再編」に取り組んできた。これは、ドコモとKDDIに細切れに割り当てられてきた旧800MHz帯をLTEの導入に対応できるそれぞれ15MHz幅の連続した帯域に集約するもの。KDDIは800MHz帯再編のため、旧800MHz帯のネットワークを、新800MHz帯と2GHz帯に置き換える作業を行ってきた。Rev.Aの基地局はこの新800MHz帯/2GHz帯に導入されている。

ところが再編が完了する2012年7月までは、ドコモが旧800MHz帯で運用するPDCとの干渉を避けるため新800MHz帯の運用帯域は5MHz幅に制限されている。そのため、新800MHz帯の基地局ではCDMA 2000の搬送波(1.25MHz幅)は最大3本までしか導入できない。うち1本は音声通信用の「1x」を導入するのでRev.Aの搬送波は最大で2本しか実装できないのだ。

図表1 KDDIのインフラ高度化プラン
図表1 KDDIのインフラ高度化プラン

月刊テレコミュニケーション2010年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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