これまで、カメラによる遠隔監視、マイクを使った騒音測定や温湿度センサーなど、人間の五感を代替する様々なIoT/ICTソリューションが生まれてきた。その中で最もICT化が遅れていたのが「嗅覚」だ。
においを検知するセンサー自体は以前から開発されていたが、高額な専用装置が多く、ICTソリューションとして手軽に利用できるものはほとんど登場していなかった。
その未開拓だった“におい市場”に今、老舗SIerからスタートアップまで、幅広い企業が参入し始めた。内閣府が2014~2018年度に実施した「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の「進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム」資料によれば、においセンシング関連の市場規模は、街中・家庭・自動車などグローバルで100兆円規模になると予測されている。
いつもと違う空気を検知SIerのコアは、においを可視化・通知するソリューション「Cagou(カグー)」を展開する。
図表1 Cagouの基本構成
Cagouでは「空気質中のにおい成分の総量」を、ガスセンサーを用いて計測する。Cagouによって検知できる成分は、VOC(揮発性有機化合物)やTVOC(総揮発性有機化合物)、アンモニア、硫化水素、アルコール。このほか、二酸化炭素や一酸化炭素、粉塵も検知できる。一般的なガス警報器の検知濃度は500~10000ppmで、空気質が平常時と大幅に違う場合でないと検知しないが、Cagouで使用するセンサーは1~30ppmの低濃度に反応し、人間と同じように空気質の微かな変化にも反応する。
センサーは、通信にWi-Fiを利用するCagou-Wを用意しており、近々Bluetooth版のCagou-Bも提供開始する予定だ。
モニタリングには、PC・スマートフォンのブラウザからアクセスできるWeb可視化ツールを使用する。設置したセンサーが一覧できるマップや、空気質、CO2、温湿度、気圧などの数値がリアルタイムに表示される。
閾値を設定すれば、正常・警告・異常の変化に応じて表示色が変わり、メール通知機能も備える。
料金はクラウドの利用料とセンサー1台の場合、月額2万5000円。センサーを1台追加するごとに5000円かかる。
「におい成分の“総量”を測定するため、成分を個別に測定する事はできないが、『いつもと空間のにおいが違う』といったレベルで検知したいお客様にはコストを抑えてご利用いただける」とコア 関西カンパニー 営業統括部 課長の蛯原孝之氏は説明する。
コア 関西カンパニー 営業統括部 課長 蛯原孝之氏
現時点では、工場における火災の予兆検知や、商業施設内の消臭フィルター交換の目安にしたいなどの引き合いがある。
例えば工場では、機械に熱が蓄積したり、製品の成形過程で不純物が混ざることで発火することがあるが、そうした発火前の予兆は、監視カメラなどでは気づきにくい。
「人がいれば焦げ臭で察知することもあるが、常時人がいるわけではないし、気がつかないこともある。Cagouを設置しておけばにおいの異変が数値で分かる」(同氏)
また、医療・介護業界向けに、おむつに排便したかどうかを検知するセンサーとしても開発・提案を進めているという。