<特集>5Gインフラ ディープガイド4キャリアが語る「MECの現在・未来」 用途開拓と高度化が同時進行

低遅延、高速大容量など5Gの真価を発揮するとして期待されているMEC。各社が研究開発を進めるが、実際、今どのような段階にあるのか、ユースケースや今後の展開はどうなるのか。通信事業者4社に聞いた。

「これまで全国で約300件の5G協創案件に取り組んできたが、そのうちの約半数はMECを活用できる『ドコモオープンイノベーションクラウド』を使った案件だ」

NTTドコモ(以下ドコモ)の岩本健嗣氏は、MECへ寄せられる期待の高さについてこう話す。4Kなどのリアルタイム高精細映像伝送、XRによる遠隔作業支援・体験、そしてAI活用などが、主に公共、製造、医療、交通の分野でユースケース実証含め活用されているという。

MEC(Multi-access Edge Computing)は、コンピューティングリソースをクラウドとは別に、より端末に近い場所に置くアーキテクチャー。従来の構成と比べて通信距離が物理的に短いため、処理した結果を低遅延で返せるほか、ネットワーク帯域も節約できる。さらに、インターネットに出ることなく通信が完結することで、セキュリティや通信の安定性も確保しやすい。

このMECを5Gネットワークと組み合わせることで、5Gの高速大容量、低遅延、同時多接続といった“真価”をより引き出せるとして早くから期待されてきた。

(左から)NTTドコモ 5G・IoTビジネス部 社会イノベーション推進担当 担当部長 岩本健嗣氏、クロステック開発部 第6企画開発担当 担当部長 秋永和計氏

(左から)NTTドコモ 5G・IoTビジネス部
社会イノベーション推進担当 担当部長 岩本健嗣氏、
クロステック開発部 第6企画開発担当 担当部長 秋永和計氏

今使えるMECサービスいずれの通信事業者もMECに取り組むが、現時点で商用サービスとして提供しているのはドコモとKDDIだ。

ドコモが提供するのは、冒頭でも紹介した「ドコモオープンイノベーションクラウド」。現在全国4箇所にクラウド基盤を構築している。ドコモ網内で通信が完結するため、低遅延・高セキュリティを実現できる。オプションサービスの「クラウドダイレクト」を利用すれば、端末とクラウド基盤を最適な経路で接続でき、さらに遅延を短縮可能。現時点の伝送遅延は平均して25msec程度となっている。

また今年7月には、Stand Alone(SA)方式での利用を想定した試験環境「Beyond-MEC」を、「ドコモ5GオープンラボYotsuya」内に新設した。伝送遅延は接続ルートに依存するが10msecを達成している。岩本氏によれば、「1、2年先のインフラ、低遅延を体感できる環境」だという。

図表1 NTTドコモ「Beyond-MEC」の構成図(画像クリックで拡大)

図表1 NTTドコモ「Beyond-MEC」の構成図

KDDIは昨年12月から「AWS Wavelength」の提供を開始。KDDIの5Gネットワーク内に、AWSのコンピューティングとストレージのサービスを設置している。伝送遅延はLTEと比べると10~15%ほど短縮できる。

従量課金制で、申込書類の提出が必要なくAWSのコンソール画面からすぐに利用開始できる点も好評だ。使い勝手も、「普段からAWSを利用している人であれば、東京リージョンの使い勝手とほとんど変わらず、特に迷うことはないだろう」(KDDIの海江田毅氏)。料金はインスタンスの種類によって異なるが、東京リージョンの利用料の1.1~1.5倍程度だという。

図表2 KDDIが提供するMECサービス「AWS Wavelength」の概要(画像クリックで拡大)

図表2 KDDIが提供するMECサービス「AWS Wavelength」の概要

月刊テレコミュニケーション2021年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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