<特集>ネットワーク未来予想図2021衛星通信が爆発的普及? 通信衛星メガコンステのサービスイン元年に

SpaceXの低軌道衛星コンステレーションによるブロードバンドサービス「スターリンク」が近くベータテストを開始する。一方、静止軌道衛星は高速化を着々と進めており、衛星通信は2021年に新時代に入る。

2020年、衛星通信業界を賑わせたのは、何といっても低軌道衛星コンステレーション構想(以下、低軌道コンステ)だ。低軌道コンステとは、地上約2000kmまでの低軌道に複数の小型衛星を配置し、それらを互いにネットワーク化して運用する方法。この低軌道コンステによってブロードバンドサービスを提供しようと様々な事業者が計画を進めている。

特に有名なのが、イーロン・マスク氏が設立したSpaceXの「スターリンク」だ。同社は現時点で955機の打ち上げに成功しており、最終的には最大4万2000機の打ち上げを計画している。また、7月末にはAmazonの「Project Kuiper」がFCC(米連邦通信委員会)の承認を取得。FacebookやAppleも同様の衛星ブロードバンドサービスを計画するなど、世界のメガプレイヤーが続々と参入している。

ソフトバンクが約20億ドルを出資し話題となったものの、2020年3月に一度倒産したOneWebも“復活”に向け、動き出している。7月にイギリス政府が主導するコンソーシアムが同社への出資を発表。イギリス政府と、コンソーシアムに参加するインドのバーティ・グローバル社がそれぞれ5億ポンドを拠出するという。

低軌道コンステを使った衛星ブロードバンド事業への参入が止まらない背景には、世界には未だに35億人が恒常的にインターネットに繋がっていないという現状がある。インターネット未整備のルーラルエリアや発展途上国などに一から地上設備を作るには手間も費用もかかりすぎる。だが、衛星通信を使えば比較的簡単にブロードバンドサービスが提供できる。実現すればデジタルデバイドの解消はもちろん、各社が提供するSNSをはじめとしたWebサービスのユーザーも増えるというわけだ。さらに、地上はもとより、飛行機の中や海上でも高品質な通信が可能になる。ビジネス向けにも、5Gのモバイルバックホールとして利用するなど様々な構想がある。

また、5Gと同様、安全保障上の観点も出てきている。「イギリスはEUを離脱したため、EUの測位衛星システム『ガリレオ』が使えなくなってしまう可能性もある。自国で位置情報を取得できる衛星を持っていることは安全保障上とても重要。しかしゼロから整備するには巨額の費用がかかるため、イギリス政府としてはOneWebの衛星を測位衛星として使いたいという意図があるようだ」。野村総合研究所 コンサルティング事業本部 グローバルインフラコンサルティング部の八亀彰吾氏はこう解説する。

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 グローバルインフラコンサルティング部 八亀彰吾氏
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 グローバルインフラコンサルティング部 八亀彰吾氏


月刊テレコミュニケーション2021年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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