超高速ネットの“ラストワンマイル”5Gにも使える新型PON「NG-PON2」とは?

我々の家庭やオフィスと通信事業者の基幹ネットワークをつなぐ「光アクセス」において、通信サービスの高速・大容量化と多品種化に備えて新技術の導入が始まろうとしている。次世代PONシステム「NG-PON2」だ。

NTT東西のNGNや携帯電話事業者のLTEバックボーンネットワークなどのメトロ/コア網と、家庭やオフィス、モバイル基地局とをつなぐ「光アクセス網」。その容量を大きく引き上げる技術革新が進んでいる。

特に注目を集めているのが、家庭向けブロードバンドサービス(以下、FTTH)で広く使われているPON(Passive Optical Network)の次世代規格「NG-PON2」だ。ファイバー1本当たりの最大伝送容量を、現在主流の1Gbpsから一気に40Gbps(オプションで80Gbpsまで拡張可能)まで増大させる新規格である。

加えて、NG-PON2には耐障害性を高める新技術も盛り込まれている。そのため、これまではFTTHにしかほとんど使われていなかったPONを、高信頼性が求められる企業向けサービスや、モバイル基地局用の光アクセスにも適用できる可能性が広がる。

“時が止まった”PONシステムまず、PONの仕組みとメリットをおさらいしておこう。

PONは現在、日本国内のFTTHの7割程度で用いられている。支持を集める理由は経済性の高さにある。

図表1のように、通信局舎にあるOLTと加入者宅のONUとの間で1対多の通信を行うため、高い集約効果が得られるのだ。もし、この間をスター型(1対1)でつなぐと加入者の数だけOLT側のポートが要るためコストが非常に高くなる。光を分岐するスプリッタも電源が不要なため、安価かつ設置・運用が容易だ。

図表1 PONシステムによる光アクセス
図表1 PONシステムによる光アクセス

このPONの標準規格には、ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の「GPON」とIEEE(米国電気電子学会)の「EPON」があり、通信方式や使用する周波数が異なっている。最大容量はGPONが上り1.25Gbps/下り2.5Gbpsの非対称型、EPONが上下1Gbpsだ。国内では後者が優勢で、NTTのフレッツ光、KDDIのau光がEPONを採用(日本独自方式として「GE-PON」と呼ぶ)している。ただし、一部のCATV会社やNURO光を提供するSo-netのようにGPONの採用例もある。

図表2 PONの標準技術
図表2 PONの標準技術

今も現役で活躍しているGPON/EPONだが、標準化されたのは2000年代前半だ。2010年頃には最大伝送容量が10Gbpsの「10GE-PON」(IEEE)と「XG-PON1」(ITU-T)が標準化されたが、まだ普及に至っていない。So-net等がXG-PON1を使った10ギガサービスを行っているだけで、大手はまだ商用展開していない状況だ。

更新が進まない最大の理由はコストだ。OLTはもちろん、すでに数千万加入者に配付されているONUもすべて交換が必要になる。また、FTTH加入の伸びが鈍化したことも、設備更新を阻む大きな要因だろう。

ただし、トラフィック需要の高まりとともに、さすがにGPON/EPONの限界も見えてきている。例えばEPONを32分岐で使えば、32加入者が同時にアクセスした場合の1加入者当たりの帯域は30Mbps程度。4K/8K時代を見据えれば、アップグレードが急がれる状況だ。

月刊テレコミュニケーション2018年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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