日本マイクロソフトの越川氏は、Office 365の拡販における最大の課題として「インストール型のOfficeを使っているお客様にクラウドの価値を納得してもらい、Office 365に移行してもらうこと」を挙げる。
グーグルやアップル等との対抗軸で語られることの多いマイクロソフトの法人事業だが、同氏は「私が担当するコミュニケーション関連製品、Office製品の分野について言えば大きな競合とは思っていない」と言い切る。iPadやAndroid向けにもサービスを提供することで「我々の手が届かないスマホやタブレットにリーチできるという意味でパートナーだと思っている」という。
すでに法人のOfficeユーザーの過半数がOffice 365を契約している。では、残り半分のクラウド移行を加速させるには何が必要なのか。越川氏は「エンドユーザーへの価値訴求」の重要性を強調する。クラウドのメリットとして、初期投資やサーバー管理費の削減効果はIT 担当者・管理者には広く認知されているが、それらは、Officeを使って日々業務を行うエンドユーザーには響かない。それよりも、業務効率や生産性向上に直接的に貢献できるクラウドの価値をアピールすることが重要になる。
実際、従来のパッケージ版OfficeからOffice 365に移行した場合のメリットは多い。マイクロソフトはすでに、新機能の開発・提供においてクラウドを優先する方針に変わっているためだ。
メリットの第1は、機能改善・追加のスピードだ。
以前は、数年ごとにバージョンアップ製品を提供してきたが、クラウドなら毎週のように、ユーザーからの要望を反映した新機能の追加が行われる。Office 365がこの1年間に強化した機能の数は180超にも上るという。最新版のOffice 2016も、Office 365を通して提供が始まっており、ユーザーから見れば、月額料金はそのままで使い続けるうちに最新のOfficeが利用可能になる。
また、“最新のものが使える”のは機能だけに留まらない。セキュリティも同様だ。Office 365はクラウド側で常に最新のセキュリティが保たれる。これまでのように、作業を中断して脆弱性を修正するパッチをダウンロードしてインストールし再起動するという手間は不要だ。
常に最新のパッチが当たった状態でアプリケーションを利用することはセキュリティ対策の基本だが、すべての社員にそれを徹底させることは難しく、脆弱性が残ったまま利用する可能性は無くならない。Office 365ならそうした手間もなくなり、安全面でもメリットがあるのだ。
もう1つ、マルチデバイスでの利用ができることも重要なポイントだ。Office 365のユーザーは、5台のPC/MAC、スマートフォン/タブレットにOfficeをインストールできる。大容量のメールボックス/クラウドストレージも使用できるため、社外でもメールや業務データを確認しながら仕事が行えるテレワーク/モバイルワーク環境の整備にも貢献する。