ICT技術解説[第1回]第5世代Wi-Fi「IEEE802.11ac」を徹底解説

この連載では、企業ICTを今後変革していく最新技術を毎回1つずつ取り上げながら、その技術が如何に重要な役割を果たしているのか、その背景から仕組みのポイント・今後の展開まで、めまぐるしく変化していくICTの技術基盤を分かりやすく紐解いていく。第1回のテーマは、ギガビットを超える速度を実現可能な第5世代Wi-Fi「IEEE802.11ac」だ。

(1)IEEE802.11acとは?

IEEE802.11acとは、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.:米国電気電子学会)が策定している無線LAN規格の1つで、2013年10月現在、最も高速な無線LANを実現できる技術として注目を集めている。

IEEE802.11acが登場するまで最速を誇っていたのは2009年に正式リリースされたIEEE802.11nで、規格上の最大通信速度は600Mbps。IEEE802.11acはこの約11.5倍に相当する6.9Gbpsを実現できる。

無線LANの規格は、1997年に登場した第1世代のIEEE802.11(最大2Mbps)から始まり、その後、IEEE802.11b(最大11Mbps)、IEEE802.11a/g(最大54Mbps)、IEEE802.11n(最大600Mbps)と進化してきており、IEEE802.11acは「5G WiFi(第5世代Wi-Fi)」とも呼ばれている。

すでにIEEE802.11ac対応のWi-Fiルータなどが製品化されているが、実はIEEE802.11acのIEEEによる標準化作業は完了しておらず、まだドラフト段階。策定完了は2013年12月の予定で、現在はドラフトのバージョン7が公開されている。

ネットワーク機器ベンダの多くは、市場ニーズに応えるために策定完了を待たずにドラフト準拠として製品をリリースしている。これらの製品は規格策定後にファームウェアアップデートにより正式仕様をカバーできるので、心配無用だという。無線LANの普及促進を目的にした業界団体であるWi-Fi Allianceも、IEEEでの標準化完了に先立ち、2013年6月からIEEE802.11acの相互接続認証プログラムの提供を開始している。

一方、総務省でも、速やかにIEEE802.11ac対応のネットワーク機器を国内で使用することができるように、2013年3月時点で、電波法施行規則、無線設備規則、特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則などの一部を改正している。

図表1 IEEE802.11acの概要(IEEE802.11nの比較)
IEEE802.11acとIEEE802.11nの比較

(2)IEEE802.11acが登場した理由

有線LANの世界で、1Gbpsの1000BASE-Tが策定されたのは1999年、10Gbpsの10GBASE-Tが策定されたのが2006年のこと。今では有線ではギガビットが当たり前のように使われている。

それに合わせてビデオストリーミングをはじめとする通信負荷の重いコンテンツが急増している。また、スマートフォンやタブレット端末などの普及で、オフィスでも家庭でも無線LANに対する需要は急速に伸びている。さらに、オフィスではBYODの浸透もあり、ひとりの社員が複数台の無線LAN端末を同時に使用するなど、1つのアクセスポイントに多数のクライアントがぶら下がるようになってきた。従って、無線LANにおいても、ギガビットの広帯域な通信環境が求められるようになったのである。

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