ドコモの新規事業戦略を追う(第1回)――土管に甘んじず「新領域収入1兆円」

iPhone不在で劣勢が続くNTTドコモ。その一方で、2011年の中期ビジョンで打ち出した「新領域収入1兆円」が具現化しつつある。ドコモの新規事業戦略をシリーズで追う。

携帯キャリアトップのNTTドコモが、M&Aによる事業領域の拡大に積極的に動き出している。その典型例が会員制の有機野菜宅配事業を手掛ける「らでぃっしゅぼーや」の買収である。

狙いは、ドコモのリソースを生かして提携企業の事業を拡大、自らの成長に取り込むこと。らでぃっしゅぼーやは、ドコモが12月に開設するスマートフォン/タブレット端末向けのeコマースサイト「dショッピング」に商品を供給する。さらに6000万ドコモユーザーからの新規会員の獲得にもつなげる。100%子会社である、らでぃっしゅぼーやの販売増は、そのままドコモの連結決算に反映されることになる。ドコモは2009年に子会社化したTV通販「オークローンマーケティング」、オムロンヘルスケアと設立した「ドコモ・ヘルスケア」などでも同様の取り組みを進めている。

ドコモはコンテンツマーケットでも、11月にゲームメーカー9社と提携しソーシャルゲーム分野に参入。ビデオ・音楽・ブックをはじめとするデジタルコンテンツの全領域をカバーするに至っている。

これらのアグレッシブな施策は、ドコモが2011年11月に発表した事業計画「中期ビジョン2015」の一翼を担うものだ。携帯電話事業は普及率が100%を超え、すでに量的な拡大は見込みにくくなっている。事業者間競争の激化や定額制の普及によりARPUも頭打ちだ。

ドコモがiモードで開拓してきたモバイルコンテンツやコマース市場でも、携帯電話からスマートフォンへの移行のなか、ネット上でビジネスを展開しているアマゾンやアップルなどのOTT(Over The Top)プレイヤーの存在感が強まってきた。中期ビジョンは、こうした状況の下で、ドコモが成長を維持するための戦略を打ち出したものだ。

基本戦略は、技術力や6000万という圧倒的な顧客基盤、充実したインフラなどのドコモのポートフォリオと強みを生かし、スマートフォン/タブレットやLTE、クラウドなどの普及が生み出すビジネスチャンスを自らの成長に取り込むことにある。そのためにドコモは、事業領域を、モバイル事業との相乗効果が期待できる多様な分野に広げようとしているのだ。ドコモは自らを「モバイルを核とする総合サービス企業」と位置付ける。

中期ビジョンでは、2011年時点では事業全体の1割程度の4000億円程に過ぎなかった新領域事業の収入を2015年度に「1兆円」とする目標を打ち出している(図表1-1)。

図表1-1 新領域収入の目標
図表1-1 新領域収入の目標

2012年10月26日に開かれた2012年度第2四半期決算発表記者会見で、加藤薫社長は、今年度の新領域収入が目標の半分余りの5200億円が見込めるところまできたことを明らかにした上で、1兆円の目標を「さらに上積みしたい」と意欲を見せた。

また自社のサービスの中でも、コンテンツやeコマースを重視する意味から、これらの収入を従来データARPUに含まれていたiチャネルやしゃべってコンシェルなどの高度サービスとともに「スマートARPU」と位置付け、従来の音声/データARPUと切り分けて管理することも明らかにした。

月刊テレコミュニケーション2012年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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