KDDIの法人戦略を東海林本部長に聞く 「組織の隅々にまでマルチ対応力を貫く」

KDDIは「まとめてオフィス」や「MULTI CLOUD」など法人市場でも新たな施策を次々と打ち出している。執行役員ソリューション事業本部長の東海林崇氏に同社の法人戦略を聞いた。

――KDDIにおけるソリューション事業本部の役割はどのようなものですか。

東海林 一言で言うと、法人のお客様にKDDIの持つすべてのサービス・ソリューションを提供する組織です。

KDDIは、KDDとDDI、IDOの3社が2000年に合併して設立されました。その後、地域系通信事業者とも合併したことで、国際通信、国内の長距離、地域系、モバイルとすべての通信手段を1社で提供できるようになりました。

法人のお客様に対しては、モバイルと固定では営業や販売手法が異なるため当初は営業組織を分けていましたが、05年頃からFMC化が進んできたこともあり、営業の組織体制も変更しました。現在のソリューション事業本部では、営業とSEは固定もモバイルもグローバルもマルチに提案する体制になっています。

――FMC体制は営業を支援する仕組みがないと難しいのではありませんか。

東海林 その通りです。この数年間は、1人の営業がモバイルと固定両方の知識を身に付け、お客様に統合的な提案をできるよう一生懸命に取り組んできました。その結果、現在では、携帯電話や固定電話を販売するかたわら、海外のデータセンターを提案するといったことは当たり前のように行われています。

――個別担当商品の販売ではなくなるということは顧客企業の仕事そのものを理解し、提案につなげる力を付けることになりますね。

東海林 従来の営業は、自分が提案しようとしている商材に関連のある視点でお客様にアプローチをしていました。ところが、トータルで提案するようになったことで、お客様の事業そのものを理解するためにどんどん踏み込んでいくことが求められています。「鶏が先か卵が先か」はわかりませんが、地道なサービス知識向上と、お客様に踏み込む提案力強化の両方を同時並行で取り組んでいます。

一気通貫でクラウド事業者と差別化

――東日本大震災をきっかけに、企業ユーザーの意識やニーズに大きな変化が生まれているといわれます。

東海林 日本は島国でしかもフェイス・トゥ・フェイスを大事にする文化から、電話会議のようなツールが浸透しませんでした。ところが震災後は夏季節電対策も含め、オフィスに出社することなく自宅で仕事をせざるをえない状況になりました。リモートアクセスについてはセキュリティの不安もありましたが、在宅勤務になると工夫して使わざるをえません。

また、データセンターに関するニーズも高まっています。すでにデータセンターをご利用されているお客様も、分散化を真剣に検討されています。このように、ワークスタイル変革が本格化し、それに合わせてシステムの設計や構築、ネットワークの組み方、セキュリティのあり方などを根本的に考え直す機会を迎えていると思います。

――デバイスからネットワーク、データセンター、アプリケーションまでをシームレスに統合する「KDDI MULTI CLOUD」を6月に発表しました。

東海林 当社はネットワークでは3GやWiMAX、Wi-Fi、固定では地域系ネットワークやFTTH、CATVなどを持っています。デバイスも携帯電話やスマートフォン、タブレットなどが揃っています。スマートフォンのOSについてはAndroid、Windows Phoneに続きiOSも加わることになりました。

法人のマルチユースはクラウドに相当すると考えています。自社で設備を持たなくてもファイルサーバーやテレビ会議システムをネットワークと一体でご利用いただける「Virtualデータセンター」といったサービスも開始しています。今後も、法人のお客様ニーズに合ったクラウドサービスを次々と提供していきます。

――クラウド事業者とはどのように差別化を図るのですか。

東海林
 クラウド事業者とご契約しても、アプリケーションにつながるネットワークは通信キャリアとの契約が必要ですし、デバイスは自社で調達しなければならないケースが多々あるのではと思っています。当社の「KDDI MULTI CLOUD」は、1つのご契約でデバイスやネットワークやアプリケーション、さらに認証やセキュリティまでも一気通貫でご利用できる世界を目指しています。

そのために、ネットワークとデバイスといった得意分野以外は、クラウド事業者やSIerの皆様が圧倒的な実力を有されているクラウド分野において優れたパートナーと一緒に取り組んでいく必要があると考えています。

月刊テレコミュニケーション2011年11月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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