周知のようにグーグルはAndroid 2.3よりNFC(Near Field Communication)を標準サポートした。最初の本格的な商用Android NFCスマートフォンは“韓国版”のGalaxy S2である(NTTドコモ版のGalaxy S2にはNFCは搭載されていない)。
今、このNFCを使ったモバイル決済が世界中で注目を浴びている。日本人にとって「おサイフケータイ」は当たり前のものとなっているが、世界中のほとんどの国では、NFCによって今から普及が進んでいくためだ。また、誰がモバイル決済の覇権を掴むのか――という点でもNFCは非常にホットな話題になっている。日本では携帯電話事業者が主導権を握ったが、これからNFCによりモバイル決済の普及が始まる海外ではだいぶ様相が異なってくる可能性も高い。
覇権争いのポイントは「SE」
NFCをめぐる覇権争いを理解するうえでは、スマートフォンへのNFCの実装方法について理解しておく必要がある。NFCの機能をスマートフォンで実現するにはアンテナのほか、次の2つのチップを搭載する必要がある。無線通信をコントロールするチップ「NFCチップ」と、各NFCアプリケーションや暗号化に必要な鍵情報などを格納する「Secure Element」(SE)で、その実装方法は次のように大別できる。
■NFCチップをスマートフォン本体に内蔵する場合
(ア)SEをSIMカード上に実装。通常のSIMカードとは違う、専用SIMカード(NFC/SIM)を利用する
(イ)SEを内蔵したmicroSDカードをスマートフォンに挿し込む(microSDソリューション)
(ウ)NFCチップだけでなくSEもスマートフォン本体に内蔵する(グーグルのNexus Sは本体にNFCチップとSEを内蔵する)
■NFCチップを本体に内蔵しない場合
(エ)NFCチップとSEの両方を備えた一体型SIMカードを利用(コンボSIMカード)
(オ)NFCチップとSEの両方を備えたmicroSDカードを利用(microSD/NFC)
覇権争いの観点に立った場合、より重要な意味を持つのは、SEがどこに実装されるかだ。電子マネーやポイント、定期券などの登録情報が格納されるSEは、NFCサービスの中核を担うためである。