<特集>日本の通信インフラの論点海とHAPSが突破口 ルーラルIoT支える国産NTNを!

米SpaceXのStarlinkを筆頭に活躍の場を広げるNTN(非地上系ネットワーク)。5Gとの連携も始まり、災害復旧に使う“非常用ツール”からルーラルIoTを下支えする“常設インフラ”へと進化していく。

「NTNは地上系ネットワークと同じように、用途によって適材適所に使い分けるものになっていく。ユーザーが意識することなく、様々なNTNと地上網を切り替えて使う世界がやってくるだろう」

そう語るのは、三菱総合研究所モビリティ・通信事業本部 次世代テクノロジーグループの下村雅彦氏だ。能登半島地震の通信復旧にStarlinkが活躍したように、昨今では非常時の通信手段として脚光を浴びるNTNだが、早晩、常設の通信インフラとして地位を確保すると予想する。

三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 次世代テクノロジーグループ 下村雅彦氏

三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 次世代テクノロジーグループ 下村雅彦氏

海洋IoT市場を創出

有望領域の1つが、ルーラルIoTだ。「特に日本はEEZ(排他的経済水域)が広い。安全保障の観点からも、いわゆるMDA(海洋状況把握)が注目されているし、漁業に海洋資源探査、船舶の遠隔制御や自律運行、そして海洋上での気象データの収集などNTNの用途は幅広い」

以前の衛星通信回線は狭帯域でコストも高く、海洋上の調査・探査は基本的に人が出向いて行うしかなかった。それがIoT化できれば「ビッグデータ活用が可能になり、コスト削減にも寄与できる」。もちろん、自律運行船のようなまったく新しいサービスも可能になる。

陸上も同様だ。携帯電話ネットワークが使えるのは国土の6割程度に過ぎない。「山間部を含めた自動運転。将来的には、ドローンや空飛ぶクルマといったエアモビリティの運用管理など、新たな通信のユースケースにおいてNTNの注目が高まる」と下村氏は予測する。

NTNの魅力はカバレッジの広さだが、今後は、通信速度や遅延性能が異なる複数の手段を用途に応じて使い分けられるようにもなっていくだろう。図表のように、GEO(静止軌道)、MEO(中軌道)、LEO(低軌道)、HAPS(成層圏プラットフォーム)があり、基本的に高度が低いほどスループットが高く遅延が少ない。

図表 NTNを構成する主な衛星システム

図表 NTNを構成する主な衛星システム

中でも注目度が高いのがLEOコンステレーションだ。Starlinkのほか、ソフトバンクが出資するOneWeb、AmazonのProject Kuiperなど複数の計画が進行中である。

ただし、LEOコンステが数千機もの衛星で地球全体をカバーするのに対して、圧倒的に少ない基数でカバーできるMEOコンステのほうが経済合理性が高いという評価もある。GEOやMEOもルーラルIoTの有力候補であり、LEOで取得したデータをGEO/MEO経由でリレーするといった連携も期待される。

また、「安全保障に関わる用途については、抗堪性(敵の攻撃に耐えて機能を維持する能力)の観点等よりGEOからLEOへのシフトなど、ユースケースと通信要件に応じた使い分けが進展していくだろう」(下村氏)。

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