<特集>もっと儲かる5Gへ5G収益拡大の鍵「ミリ波帯」 NR-DCで大容量SA網へ

大容量の5Gネットワークを経済的に整備する手立ての1つがミリ波帯の有効活用だ。NR-DCで実現される大容量SA網が、新たな収益機会を生み出す基盤となる。

総務省の調査によると、昨年12月に国内のモバイルネットワークでやり取りされたデータトラフィックは、平均6700Gbps。1年前の1.3倍、3年前と比較すると1.8倍という大きな伸びを示した(図表1)。VR/AR展開の本格化などで、増加ペースは今後さらに加速するものとみられる。

図表1 移動通信トラフィックの推移

図表1 移動通信トラフィックの推移

通信事業者の収益が伸び悩む中、急増するトラフィックに対応できる大容量の5Gネットワークをいかにリーズナブルに整備するかは、“儲かる5G”実現の鍵といえる。

その有力な手立ての1つとなるのが、ミリ波帯の有効活用だ。

「ミリ波帯では、Sub6帯と比べて広い帯域が通信事業者に割り当てられており、ビームフォーミングを使うことなどで、1つの基地局で大きなキャパシティを確保できる。トラフィックが特に逼迫する駅周辺やスタジアム、ショピングモールなどをミリ波帯でカバーすれば、Sub6帯を利用するよりも格段に効率的にトラフィックを収容できる」と話すのはクアルコムの臼田昌史氏だ。

クアルコム ジャパン ディレクター ビジネスデベロップメント 臼田昌史氏

クアルコム ジャパン ディレクター ビジネスデベロップメント 臼田昌史氏

ベルラボ・コンサルティングが英国市場をモデルに行った試算によると、高トラフィックエリアをミリ波帯でカバーした場合、ビットレート当たりコストは、Sub6帯をマイクロセルで展開するよりも75%削減できるという。

臼田氏は「当該試算は、英国のセンサスデータを使っているため、この数字をそのまま日本で適用できるわけではない」としながらも、「ベルラボ・コンサルティングでのスタディで指摘されている通り通信事業者にミリ波帯とSub6帯の両方が割り当てられている日本の5Gは大きなポテンシャルを持っている」とみる。

対応端末がネックに

とはいえ現在のところ、ミリ波帯が有効に活用されているとは言い難い。2022年10月時点でのミリ波帯(28GHz帯)の基地局数は2万3000万局。Sub6帯(3.7/4.5GHz帯)の基地局数が約5万局なので、数は決して少なくないが、問題はこのミリ波帯基地局がほとんどトラフィックの処理に寄与していないことだ。

ネックとなっているのは、対応端末の少なさである。主流の5Gスマートフォンの中でミリ波帯をサポートしているのはハイエンド機の一部。販売手数料の抑制による端末価格の上昇で、ミリ波帯対応端末への買い替えが進んでいないのだ。

クアルコムの森下和彦氏は、「コストや機器構成のシンプル化など、ミリ波帯対応端末の普及に向けた努力を続けている」と言うが、本格的な普及は少し先になりそうだ。

クアルコム ジャパン シニアディレクター プロダクトマーケティング 森下和彦氏

クアルコム ジャパン シニアディレクター プロダクトマーケティング 森下和彦氏

日本とは対照的なのが米国だ。当初5Gに割り当てられた周波数帯がミリ波帯に限られていたことから、スマートフォンのミリ波帯対応が進んだ。

米ベライゾンは、2月に開催された「第57回スーパーボウル」の会場であるState Farmスタジアム(アリゾナ州グレンデール)にミリ波帯を活用した大容量の5Gインフラを整備しているが、「イベント中にこのネットワークでやり取りされたデータトラフィックの7割以上がミリ波帯によるもの。スーパーボウルの来場者6万8000名の6割を占めるベライゾンユーザーの6割がミリ波帯対応スマートフォンを保有していた」(森下氏)という。

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