企業が顧客との関係を深める場は、店舗等のリアル環境からデジタル空間へと急速に移行している。「コロナによってデジタルエンゲージメントの重要性が高まった。それ以前は正直“あれば(嬉しい)”という位置づけだったが、今や企業にとってデジタルコミュニケーション戦略は、なくてはならないものになった」。そう語るのは、Twilio Japan 代表執行役員社長の今野芳弘氏だ。
Twilio Japan 代表執行役員社長の今野芳弘氏
Twilioは、音声/ビデオ通話、SMSといったコミュニケーション機能をクラウド型で提供するプラットフォーム事業者だ。同社は2021年9月21日にオンライン説明会を開き、その利用動向とビジネス状況を説明した。
Twilioが提供する各種のコミュニケーション機能群は、APIを介して様々なアプリケーションに組み込むことができる(下図表を参照)。ECアプリを提供する企業等は、そのアプリにTwilioの機能を組み込むことで顧客と直接対話したり、メッセージを交換したりすることが可能になる。UberやNetflix、ING Bank、Airbnb、Twitterなど多くのグローバル企業が、顧客エンゲージメントの強化にTwilioのプラットフォームを活用しているという。
Twilioが提供するコミュニケーション機能の概要
今野氏は、コロナ禍を経てその流れが日本企業にも広がり始めたと話した。「従来は欧米からかなり遅れていたが、だいぶ追いついてきた。導入期間に対する要求もシビアになってきている。今までは3カ月ほどかかっていた導入期間が1カ月になり、週単位でシステムを構築したいというニーズも増えてきている」
トレンドは「ビデオ」と「AI活用」
Twilioの代表的なユースケースは、コンタクトセンターや顧客サポート業務だ。Twilioを活用することで、これらのシステムに音声・SMS機能等を短期かつ開発コストも抑制しながら導入できるという。
SMSについては「顧客の電話番号しかわからないときにもリーチできて、かつ開封率も高い」のが利点で、さらに金融やECでは「特に二要素認証のニーズが高い」(今野氏)。Netflixも、顧客アカウントのセキュリティ確保にTwilioのSMS機能を活用している。
SMSはプロモーション用途のほか、二要素認証での活用も増えている
そして、「コロナ禍でニーズが高まったのがビデオだ」(同氏)。Twiillioを利用し、顧客向けのアプリケーションにビデオチャット機能を組み込むユーザーが遠隔医療や営業・テレセールス、教育現場などで導入が増えてきているという。
米yemboが開発した引っ越し業界向けアプリの場合、AIも組み合わせた。
引っ越し業界向けアプリでの活用例
ビデオ通信と画像認識AIを組み合わせたもので、従来は専門スタッフが客先に出向いて行っていた引っ越し作業の見積りをリモート化、自動化できる。見積もりを依頼した本人が、スマートフォンで住まいと荷物をビデオ撮影すると、その映像を元にAIが荷物の量を判断し、見積額を自動で算出する。ビデオチャットやSMSを用いてスタッフと顧客がコミュニケーションすることも可能だ。