ここ数年、「OT・ITの融合」という言葉を耳にする機会が多い。
工場の制御系(OT)システムと、OAシステムや生産管理システムなどの情報系(IT)システムは、もともと別個のものとして存在し担当部門も異なっていた。その融合がうたわれるようになった背景には、製造業が置かれた厳しい現状がある。
新興国の台頭によりグローバル市場での競争が激化しているのに対し、少子高齢化が進む国内市場は縮小している。その一方、多様化する消費者のニーズに応えるため、現場には臨機応変な少量多品種生産が求められているが、そのための人手も不足している。
そこでデジタル化・スマート化によりOT側の様々なデータを収集・解析し、IT側の生産計画に反映したり、IT側で現場の状況をリアルタイムに見える化することで効率化や省人化につなげようとしている。
そのためにはITネットワークとOTネットワークを相互に接続する必要があるが、ここで問題になるのがOTネットワークの特殊性だ。
工場の製造ラインで使われるネットワークは主として、(1)情報系ネットワーク、(2)コントローラー間ネットワーク、(3)フィールドネットワークの3層で構成される(図表1)。
図表1 製造現場のネットワーク構成
階層ごとにネットワーク要件が異なっており、高信頼性・高レスポンス性が要求されるコントローラー間/フィールドネットワークには産業用イーサネットが用いられている。
一口に産業用イーサネットと言っても、実に様々な規格がある。メーカーや機器ごとに異なるネットワークを採用しているのはもちろんのこと、自動車などの大規模工場では1つの製造ラインが非常に大きく、ラインごとに異なるネットワークを採用しているケースも少なくない。
ネットワンシステムズでは、“つぎはぎ”状態にある既存のOTネットワークを活かしつつ、IoT-LANと呼ばれる統合基盤に集約し、IT側のMES(製造実行システム)と連携させることで効率化を実現する仕組みを2015年より提供している。
「この2~3年、当社のお客様の間でOTとITのネットワーク融合のニーズが非常に高まっており、案件も増えている」とネットワンシステムズ ビジネス開発本部 フィールドマーケティング部 シニアエキスパートの竹之内寿氏は述べる。
ただ、OTとITの融合はネットワークをつなげれば完了というわけではない。ネットワーク化すると、サイバー攻撃のリスクが増すことはどうしても避けられないが、ITではセキュリティ対策が最優先事項であるのに対し、OTでは可用性が第一という考え方だ。脆弱性対策が取られていない機械も多く、ITとの融合が進むにつれセキュリティ被害の件数が増加している。
そこで、ネットワンシステムズでは工場内のネットワーク環境を可視化し、想定外の通信があればサイバー攻撃を疑うという「ゼロトラストセキュリティ」を提案しているという。