5Gの特徴である低遅延をフルに活かすには、MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)が欠かせない。商用5Gの開始とともに「ドコモオープンイノベーションクラウド」をスタートしたNTTドコモに続いて、2020年12月にはKDDIもAWSとの提携によりMECの提供を開始。超低遅延通信を生かしたソリューションの開発がいよいよ本格化する。
ただし、両者には相違点も多く、新しいコンセプトであるMECの“標準形”はまだ見えてこない。また、NTT東日本は新構想“リージョナルエッジ”の実現に向けた準備を着々と進めている。
小さいAWSを5G網内にドコモとKDDIの最大の違いは、後者がAWSとの提携によりMECサービスを展開している点だ。
KDDIは、5Gネットワーク内にAWSのコンピューティング/ストレージサービスを配置してデータ処理を行う「AWS Wavelength」を提供する(図表1)。12月に東京で、2月からは大阪でも開始。4Gに比べて遅延が半分以下になるという。
図表1 5G×AWS Wavelengthが提供する3つの価値
エッジで「AWSと同じ使い勝手」「AWSとの連携」が実現できることも売りだ。AWSでのアプリ開発・提供に慣れたユーザーにとって、これは大きな価値といえる。馴染みのあるツール・APIを使って超低遅延サービスを開発できる。12月の発表会でAWSジャパン 執行役員 技術統括本部長の岡嵜禎氏は、世界各国の通信事業者にAWS Wavelengthの提供が広がることで(現在4社)、「一度開発したアプリをグローバルなキャリア網に展開できる」こともメリットに挙げた。
これと同様のソリューションは、マイクロソフトも用意している。「Azure Edge Zone with Carrier」だ。人口密集地にある通信事業者のデータセンターに配置するAzureの拡張機能で、2021年1月時点でAT&Tがアトランタなど3都市で提供している。なお、ローカル5G向けの「Azure Private Edge Zone」もある。