NTTコムがOPC UAを選んだ理由 “産業用IoTの標準仕様”をキャリアはどう活かすのか

スマートファクトリーの国際標準技術として欧米で普及するOPC UA。NTTコミュニケーションズはこれをクラウドやエッジ、ローカル5Gシステムに組み込み、産業用IoT推進の起爆剤にしようとしている。

産業用IoTを実現するには、様々なデバイス・機械、アプリケーション間の相互運用を可能にするための情報交換の仕組みが不可欠だ。

その橋渡し役として存在感を高めているのが「OPC UA(OPC Unified Architecture)」である。異なるベンダーの産業用機器/アプリ間でのデータ交換を可能にする国際標準規格(IEC62541)であり、2015年にドイツの「インダストリー4.0」における推奨規格となったことで注目を浴びた。その後、スマートファクトリーを支える基盤技術として欧州や北米で普及。2019年には中国も、OPC UAを標準規格(GB規格)とした。

規格を策定するOPC Foundationの加盟者数は2020年末に800を突破。ここ2年で急増している状況だ。

通信キャリアとして初参加このOPC Foundationに昨年、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が加盟した。産業機器/アプリのサプライヤーが中心の同団体において、通信キャリアの参加は初となる。

近年はグーグル等のIT企業、ロレアル等のエンドユーザーが増え、またシスコシステムズやファーウェイも名を連ねるなど「会員は多様化しているが、通信インフラを支える企業の参加は初めて。OPC Foundationでも大きなトピックになっていた」と、国内で普及推進活動を行う日本OPC協議会代表幹事の大野敏生氏は話す。

「参加の理由は、産業IoTを推進するときの5つの壁を、OPC UAで解決できると考えたから」だと語るのは、NTTコム イノベーションセンター スマートファクトリー推進室/スマートシティ推進室 担当部長の境野哲氏だ。

同社は約5年前にIoT推進組織を立ち上げたが、IT系と作法が異なるOTネットワークは「なかなか手が出せない領域だとわかった」(境野氏)。5つの壁とは、次のようなものだ。

1つはデバイス、アプリの相互運用性がないこと。2つめに、OTとIT・クラウドを安全に連携させる仕組みが確立されていない。

残り3つも、キャリアでありSIerである同社にとって厄介な壁だ。「3つめは、NTTに馴染みがない現場の人・モノの安全を守ること。4つめはデバイスの管理だ。どこに何がつながっているのかわからない。最後に、産業用ネットワークで通信品質を保証するのも難しい」

月刊テレコミュニケーション2021年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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