<特集>ワイヤレスIoT最新動向ELTRESは街へ海へ 長距離伝送、移動体通信で広範囲をカバー

LPWAとして比較的新しいELTRES。長距離伝送や移動体通信などの強みを生かし、スマートシティから海上での通信まで、あらゆる場所をカバーする。最新状況や今後の注力分野について解説する。

ソニーネットワークコミュニケーションズが提供する「ELTRES」は国内で利用できるLPWAとしては比較的新しい。2017年にソニーセミコンダクタソリューションズが技術開発を公表、2018年にETSI(欧州電気通信標準化機構)で国際標準規格として採択され、2019年9月から商用サービス「ELTRES IoTネットワークサービス」を開始した。

図表1 ELTRESの概要

図表1 ELTRESの概要

ELTRESの特徴は何といっても長距離通信だ。見通しを確保した状態であれば、富士山から和歌山県那智勝浦町まで321km伝送した実績もある。また、移動体との通信にも強く、時速100km以上で走る新幹線の中からでもデータ送信が可能。GNSSも標準搭載しており、安定通信、低消費電力性にも優れる。

国内展開については、NECネッツエスアイとオリックスと共同で行っており、ソニーセミコンダクタソリューションズが通信モジュールの製造・販売など技術的サポートを担当する。2019年5月から始めたパートナープログラムも順調で、今や200社超が参加している。

図表2 国内展開のイメージ

図表2 国内展開のイメージ

新サービスも続々ここからはELTRESの最新状況を見ていこう。

国内人口カバー率は2020年11月の時点で90%を達成した。「やはりエリアができ上がっていると、『それなら試してみようか』と言ってくださるお客様が多く、今、色々と引き合いが増えている状態だ」とソニーネットワークコミュニケーションズの鈴木説男氏は話す。

ソニーネットワークコミュニケーションズ IoT事業本部 事業推進部 担当部長 鈴木説男氏
ソニーネットワークコミュニケーションズ IoT事業本部 事業推進部 担当部長 鈴木説男氏


2020年10月にはELTRES IoTネットワークサービスに、1分間隔でデータ送信ができる新プラン「1分間隔送信プラン」を追加した。同サービスのデータ送信方法には、定期送信とトリガー送信の2種類あるが、これまではいずれも最短3分間隔だった。1分間隔送信プランを使うことで、移動車両などのより正確なトラッキングや、子どもの見守りの精度を高めることができる。

また、IoTは敷居が高いと感じているユーザーにも触れてもらうため、「実証実験プログラム」の提供も開始した。トラッカーとネットワーク、アプリケーションをセットにしたトラッキング用のプログラムと、これに温湿度や加速度など各種センサーを内蔵したビーコンを付けたプログラムの2種類で、前者は4カ月で1万円、後者は1万2000円で提供している。

さらに同社では新たに、物流パレットや車両、建築材の見守りなどに最適な「Asset Tracker」を開発している。

ソニー製 ELTRES Asset Tracker
ソニー製 ELTRES Asset Tracker
(画像提供:ソニーネットワークコミュニケーションズ)

「移動体に使われることを想定し、非常に頑丈に作っている。電池寿命は1日2回の送信で10年間持続する。正直に言って数百円レベルの安いものではないので、比較的高価なパレットやシャーシなどの位置管理などに使うイメージだ」(鈴木氏)

このトラッカーを活用したサービスの開始に向け、実証も進めている。日本特殊炉材では、高額な噴射機を顧客に貸し出した際、又貸しや紛失されることがあった。そこで噴射機の位置を把握するため、これを取り付け、通信回数を増やし2年程度の電池寿命にするという。

月刊テレコミュニケーション2021年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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