帯域需要の高まりを受けて、日本中でデータセンターネットワークの100ギガ化が加速している。それと並行して進展し始めたのが、オープン化だ。これまでネットワーク機器メーカーが一体的に提供してきた伝送装置やスイッチ等のコンポーネントを分離し、ユーザー側が個別調達、組み合わせて使えるようにする流れである。
そのメリットは多岐にわたる。選択肢が広がり、用途に応じた性能・機能を備えるコンポーネントを適正なコストで調達してネットワークを構築できるようになるのだ。
このオープン化の端緒と言えるのが“Third Party Optics”、つまりスイッチメーカーの純正品ではなくサードパーティ製トランシーバーを採用する動きだ。純正品に比べて低コストに調達でき、伝送規格の選択肢も増える。
今、このトレンドが幅広い業界にジワジワと波及していると語るのは、Third Party Opticsを推進しているマクニカネットワークス 第1営業統括部 デジタルサービスプラットフォーム部1課の鈴木沙歩子氏だ。「ISPやWeb事業者での導入が増えている。初期投資はもちろん、運用コストの削減を目的とされるケースも多い」という。
マクニカネットワークス 第1営業統括部 デジタルサービスプラットフォーム部1課の鈴木沙歩子氏 (中央)と朝戸優太郎氏(左)、マクニカ クラビスカンパニー技術統括部 技術第5部の阿部野一郎氏
同社は、世界中の大手通信システムメーカーに対して光トランシーバーをOEM提供しているⅡ-Ⅵ社(旧Finisar社)製品を販売している。最近ではデータセンターのみならず、通信事業者がコアネットワークにⅡ-Ⅵ製の100Gモジュールを採用している例もあるという。
さらに、ケーブルテレビ事業者や一般企業でも導入検討が始まったと話すのは、同課の朝戸優太郎氏だ。「Third Party Opticsを紹介すると、すぐに見積り依頼をいただくことも珍しくない。まず社内ネットワークなどサービスに影響のない部分で実績を作り、徐々に適用範囲を拡大していくお客様が多い」。
多岐にわたる“非純正”のメリット 在庫管理の合理化にも注目実際の導入事例を紹介しながら、Third Party Opticsのメリット(図表)を整理しよう。
図表 Third Party Opticsのメリットと課題
調達コストの大幅減を実現したのが、LINEだ。2019年のサーバールーム新設に当たり、Ⅱ-Ⅵ製トランシーバーを採用。これをホワイトボックススイッチと組み合わせてオープン性の高いネットワークを構築した。
同社では、1ルーム当たり4000個超の光トランシーバーが必要で、ネットワーク全体に占める光トランシーバーのコストが非常に大きくなっていた。そこで、純正品と同等の品質を持ちながら低価格なⅡ-Ⅵ製品を採用したのだ。
ドワンゴも、2017年から始めたネットワークインフラの“全光化”に合わせてⅡ-Ⅵ製を採用。これにより、純正品ではまだ高額だった100Gトランシーバーへの投資が可能になった。
純正品のラインナップには存在しないモジュールを調達できることもThird Party Opticsの見逃せないメリットだ。選択肢が広がることで、オーバースペックな純正トランシーバーを購入することがなくなる。用途に合わせて適切な製品を選べるため、ネットワーク構成の柔軟性も向上する。
運用負荷軽減のメリットも大きい。
純正品の場合はスイッチメーカーごとにトランシーバーの在庫を管理する必要があるため、どうしても負担が大きくなる。対して、主要メーカーの多くにOEM供給しているⅡ-Ⅵ製なら、同じモジュールを複数種のスイッチで使い分けられる。調達と在庫管理を統一できるのだ。LINEやドワンゴ、またデータセンター事業者のブロードバンドタワーもⅡ-Ⅵ製の採用後は、消耗品としてシンプルに管理できるようになった点を高く評価している。