5Gの商用開始が間近に迫った1月23日、NTTドコモが「6G」の技術コンセプトを発表した。5Gを高度化させた5G evolutionと6Gによって実現が期待されるユースケースや、6Gの目標性能、技術要素をまとめたホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」を公開。2030年頃の6G提供を目指す。
総務省も1月28日に「Beyond 5G」、つまり6Gに関する総合戦略の策定に向けて「Beyond 5G推進戦略懇談会」の第1回会合を開いた。2020年夏をめどに最初の取りまとめを行う。
こうした動きは、米中韓をはじめ各国で6Gに向けた議論が始まっているのを受けたものだ。国際標準の策定に日本が深く関与し主導権を発揮するためには、出遅れは許されない。
5Gで立ち上げ、6Gで成熟6Gとは、どのような通信技術になるのか。先述のホワイトペーパーの執筆者の1人である5Gイノベーション推進室 5G無線技術研究グループ 担当課長の岸山祥久氏はこう語る。
NTTドコモ 5Gイノベーション推進室 5G無線技術研究グループ 担当課長の岸山祥久氏
「移動通信の技術は10年単位、それを用いるサービスは20年単位で代わっている(図表1)。奇数で立ち上げ、偶数で成熟する。その意味では、産業向けの移動通信の利用が5Gで盛り上がり、6Gで成熟していく方向になると考えている。Society 5.0の実現に向けて『サイバー・フィジカル融合』が5Gで走り出し、それが6Gでさらに高度化していく」
図表1 移動通信における技術とサービスの進化
6Gの技術要件やユースケースの議論を進めるうえでは、2030年代の社会や世界観についての考察が大前提となるが、重要なテーマの1つがサイバー・フィジカル融合だ。
2020年代の5G evolutionも仮想・現実空間の連携を進化させるが、6Gの時代にはさらに高度化する。その中で6Gは両空間をつなぐ“神経”の役割を果たす。人体に例えると、現実世界のセンサーやデバイスが目や耳、手足のような各器官に、AIが頭脳に当たり、その間の情報伝達を6Gが担う。
ドコモが示すサイバー・フィジカル融合のイメージ(「DOCOMO Open House 2020」にて撮影)。
6Gがサイバー空間とフィジカル空間をつなぐ神経の役割を果たすことで、
「両空間の隔たりのない融合」が実現されると展望している
サイバー・フィジカル融合が“超高度化”していくなかで、その神経系に求められる要件とは何か─。これが、6Gの技術要件を検討する際の1つの方向性となる。以下、エリクソン、ノキアベル研究所の見解も踏まえて6Gの姿を展望していこう。