「今、“モデルチェンジ”しなければ、会社が無くなると思っている」
2017年からNTTドコモやNECと5G実証実験を行うなど、デジタルトランスフォーメーションに先進的に取り組んできた綜合警備保障(ALSOK)。その理由を同社 開発企画部 新規事業担当 執行役員待遇の桑原英治氏はこう述べる。
綜合警備保障 開発企画部 新規事業担当 執行役員待遇 桑原英治氏(右)、
セキュリティ科学研究所長 原田容仁氏
2つの強い危機感強い危機感の背景にあるのは、警備業を取り巻く環境変化だ。
まず迫られているのは、役割の変化である。ALSOKによれば、侵入窃盗の認知件数が国内でピークを迎えたのは2002年。ホームセキュリティなどの警備サービスの普及に伴い、その後は減少し続け、2017年にはピーク時の5分の1になった。
「しかし世の中は本当に安全・安心になったのか。一般の方にアンケートを取ると、実はそう感じていない方が多い。なぜなら、今までなかったような犯罪が増えているからだ」と桑原氏は指摘する。近年相次いでいる子供を狙った犯罪やストーカー、特殊詐欺、無差別テロなどのことだ。
こうした痛ましい事件は、どうすれば防げるのか。
「これまでは何か起こってから対処するのが警備会社の役目だった。しかし、このモデルを完全に変えなければいけない。犯罪の予兆を捉え、未然に防ぐ警備モデルへのシフトだ」と桑原氏は語る。
もう1つの変化は人手不足である。日本全体の課題だが、とりわけ警備業界の人手不足は深刻だ。
昨年12月の厚生労働省のデータによれば、全職業の平均有効求人倍率が1.53倍なのに対し、警備員などの「保安の職業」の有効求人倍率は8.32倍。いかに警備業界が人手確保に苦しんでいるかが分かるだろう。
人手に頼れない中、犯罪の予兆を捉えるにはAIの力が不可欠である。また、AIで高精度の分析を行うには、4Kなどの高精細映像が欠かせない。そして、4K映像は、5Gでないと伝送できない。
桑原氏はAI・4K・5Gを現代版「三種の神器」と呼ぶ(図表1)。
図表1 現代版三種の神器
「未然に防がないといけない事件が次々起きる、人手がどんどん減っていく。こうした状況に対して、手立てを打てる材料がちょうど出てきた。だから今、モデルチェンジだという流れだ」