無人航空機ドローンは、農業や物流など様々な業種において、高齢化や人手不足といった課題解決の“切り札”として注目が集まっている。
経済産業省が2017年に公表した「空の産業革命に向けたロードマップ2018~小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備~」(官民協議会作成)」にはドローン利活用のスケジュールが盛り込まれており、現在はレベル3の「無人地帯での目視外飛行(補助者なし)」の段階にある。レベル4の「有人地帯(第三者上空)での目視外飛行」については、「2020年代前半~」という表現にとどまっていたが、2019年6月の成長戦略閣議決定で「2022年度に実現する」と具体的な目標が打ち出された。
国内でドローンの技術開発をリードしてきたのが、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2017年度に立ち上げた「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」だ。
2022年度までの5年間に及ぶDRESSプロジェクトには民間企業など42のプレイヤーが参加、2019年までに技術開発を一通り完了した。その成果を基に、2020?21年度は社会実装に向けた取り組みを進める計画だ。
過密状態での飛行に手応え都市部など第三者上空での目視外飛行を実現するには、狭い同一空域で複数のドローンが安全に飛行するための「運航管理システム」や、ドクターヘリなど高度が重なりやすい有人機との衝突を自律的に回避する「衝突回避技術」が不可欠となる。
DRESSプロジェクトが開発を進めてきたこれら2つの技術は、どこまで進展しているのか。
1つめの運航管理システムについては、2019年10月に福島県・南相馬で最新の実証実験が行われている。NEDOプロジェクトのメンバー17事業者のほか、一般ドローン事業者など計29事業者が参加し、物流や郵便、警備、農薬散布、気象観測など計21の用途別にドローンが飛行した。
ドローンが飛行する高度や経路は、用途により様々だ。例えば警備の場合、上空60mを飛ぶ「俯瞰ドローン」2機が不審者を発見すると、上空30m地点を飛行する「巡回ドローン」2機がルートを変更して不審者の元へ急行する。物流や郵便の場合は一定のエリア内を往復する。
「運航管理システム」は2022年度の社会実装を目指している
また、今回の実験ではドローンの種類も多岐にわたった。2.4GHz帯や920MHz帯のアンライセンスバンドを用いる機種、通信キャリアのLTEネットワークを利用する機種に加えて、衛星回線を使ったドローン、大型のシングルローター型ドローン、小型ドローンなども参加した。
約1k㎡の上空を1時間に146フライト、同時飛行数37機という従来の実証実験にはない“過密状態”となったが、「非常に狭い空域で高密度に飛行できることが論理的には実証された」とNEDO ロボット・AI部 主査 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏は話す。
NEDO ロボット・AI部 主査 プロジェクトマネージャー 宮本和彦氏
ドローンが飛行するに際しては、あらかじめインターネットから申請を行い、その情報に基づいて運航管理システムが各ドローンの飛行計画や飛行経路の調整を行う。処理にかかる時間は、1件あたり数秒程度だ。実証実験では申請件数が格段に増えたにもかかわらず、遅延なく対応できたという。