中小規模のオフィス・店舗等を、データセンターや本社のサーバールームへインターネットVPNでつなぐ。日本中で、この拠点間ネットワークを長年支え続けてきたのがヤマハのVPNルーターだ。簡単で安価、かつ安全につなぎたい──を叶える製品として多くの企業から支持を集めてきた。
ところが数年前から、データセンター/本社側に置かれるセンタールーターについてある難題が持ち上がった。サーバーがクラウドへ移行した結果、ラックにはルーターだけが取り残される状況が相次ぎ発生したのだ。「ヤマハルーターもクラウド側へ持っていけないかというご相談が増えてきた」と語るのは、ネットワーク戦略グループ 主幹の小島務氏だ。
ヤマハ 音響事業本部 コミュニケーション事業統括部 ネットワーク戦略グループ 主幹の小島務氏
ユーザー待望の仮想ルーター登場 物理ルーターと使い勝手は同じクラウドとの接線方法はこれまで、センタールーターに拠点間ネットワークを収容してからクラウドと接続する方法が主流だったが、現在望まれているのは、拠点とクラウドを直接つなぐ新しいネットワーク構成だ。
そこでヤマハがここ数年進めてきたのが、パブリッククラウドが提供する仮想ルーター機能とヤマハルーターの相互接続である。AWSを皮切りにOracle Cloud、Microsoft Azure、さくらのクラウド、ニフクラなど各種クラウドとの接続検証を実施。ヤマハのWebサイトでクラウド側とルーター側の設定方法を詳細に解説するほか、特にニーズの高いAWSについては、VPN接続設定の自動化機能をヤマハルーターに実装するなどしてユーザーの声に応えてきた。
その一方で、ユーザーが待ち望んできたのが、クラウド上に実装できる「ヤマハの仮想ルーター」である。拠点側もクラウド側もヤマハルーターでVPNを終端できれば、これまで培った技術やノウハウをクラウドでも活かせるうえ、使い勝手や機能性も高まる。
これに応えて、ヤマハが2019年秋に満を持してリリースしたのが仮想ルーター「vRX」だ。第1弾として9月から、AWS版を提供している。
vRXは物理ルーターとの“100%互換”を目指して開発されており、機能も同等なら設定作業も全く同じ。ヤマハルーターのユーザーならこれまで通り、「vRXを中心としてリアルなネットワークとクラウドのネットワークを、あるいは複数の仮想ネットワーク同士をつなぐ」ことができる。
なお、ヤマハは、AWS以外の他のプラットフォーム向けにもvRXを提供していく計画だ。