NTTコミュニケーションズは2019年7月3日、第五世代移動通信システム(5G)で、放送コンテンツのIP伝送規格である「SMPTE ST 2110規格」による音声および時刻データを伝送する実験に世界で初めて成功したと発表した。

SMPTE規格は、放送に関する国際的標準として広く用いられており、その中でIP伝送においてはSMPTE ST 2022規格が主流。だが、NTTコムの発表によれば、複数の中継映像・音声データのタイミングのずれを補正する時刻同期を別の機械で実施する必要があり、専門的なスキルと多大なコストが必要となる。そこで近年、時刻同期が可能なST 2110規格が提唱され、複数個所の中継における新たな伝送規格として注目されているという。

一方、中継現場から高精細な放送コンテンツを遅延なく伝送するためには、非圧縮映像が伝送可能な高速回線が必要となる。NTTコムは、放送事業者が効率的かつ柔軟に高精細な放送コンテンツを伝送できる環境の構築に向けて、5GにおけるST 2110規格のデータ伝送実験を実施した。

実験のイメージ

今回の実験では、カメラおよびマイクから取得した音声情報を圧縮処理することなくSDIからST 2110規格IPデータに変換し、GMC（Grandmaster Clock。PTPによる高精度時刻同期を行う際の基準時刻の提供元）を通じて取得した正確な時刻情報と組み合わせて、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」の5G環境を活用した伝送実験を実施した。

人手を介さず時刻同期が可能なSMPTE ST 2110規格のデータを5Gで伝送する試みは世界で初めてのことという。NTTコムは、専門機材やケーブルが柔軟に設置しにくい災害現場やスポーツ会場における4K/8Kの無線中継などの実現に向けた第一歩になるとしている。