KDDI小西氏「5Gの電波は屋内で予想以上に飛ぶ」「人口減少・高齢化に伴う労働力不足や国際競争力の低下、多様化する個々人の価値観に合った豊かさの創出。この2つを両立させていくことが、我々の大きな課題になる。5Gはこれを解決する有力な手立てになる」
KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部 副本部長の小西聡氏は講演の冒頭でこう述べた。サイバー空間と実環境が連動することで、様々な課題の解決が可能になる。5Gはこれをリアルタイムでつなぐ手段になるというのだ。
KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部 副本部長 小西聡氏
小西氏は、その具体例として、企業や自治体と連携して取り組んでいる5G実証試験を紹介した。NECや大林組と共同で実施した重機の遠隔操縦は、人手不足の解消に大きな役割を果たすことが期待されている。スマートファクトリー(工場の無線化)は、ラインの変更に伴う配線の引き直しなどを不要とする。
福島県磐梯町の栄川酒造をフィールドに行われている「酒造におけるもろみ熟成の遠隔監視」のトライアルでは、4Kカメラでもろみタンクを監視することで、24時間作業場に張り付いていなければならない、もろみの熟成作業を効率化することを狙っている。杜氏の醸造管理の知見継承に活かすことも期待されているという。
同じ取り組みは有線でも行えるが、「水を使うことが多い酒造りでは、無線の方が使いやすい」とのこと。
小西氏は、こうした「人口減少・少子高齢化への対応」に加え、「個人の豊かさの追求」の課題解決に向けた取り組みの1つとして、沖縄セルラースタジアム那覇で行われた自由視点映像サービスを紹介した。4Kカメラ16台で撮影された映像をもとに、ユーザーは任意のアングルの映像を5Gタブレットで楽しめる。
KDDIが5G時代に目指す方向性
小西氏は、KDDIの5G展開計画を「まずプレサービスを今年度に開始、来年度から広く5Gの基地局を展開。2021年以降に本当にいろいろなユースケースを試せるネットワークを作っていきたい」と説明。これに向け、当初の「展開フェーズ」では、効率的なエリアの整備を進め、2021年度以降の「本格化フェーズ」では、ネットワークスライシングなどにより多様なサービスを実現できるネットワークの整備を進めていく考えだという。
KDDIの5G導入計画
展開フェーズに向けて実施している5Gの伝送実験では、「工場などの屋内環境で28GHz帯、4.5GHz帯ともに、反射により予想外に電波が遠くに届くことがわかった」という。スマートファクトリーなどの実用化に追い風となる検証結果だ。また、「木造住宅であれば、28GHz帯でも石膏ボード程度の仕切りを超えて通信ができた。屋内での展開にも注力していきたい」と小西氏は語った。
本格化フェーズに向けては、サービス要件に応じて無線リソースを割り当てることがネットワークスライシングの実現にあたって重要になると見ており、実証実験ではすでに成果が出ているという。