従来の固定型オフィスからフリーアドレスに移行する場合や、仕事の内容に合わせて働く場所を選ぶABW(Activity Based Working)を実践するには、オフィスのスペースや設備を整えるだけでは十分ではない。まず、働き方の現状や従業員のニーズを理解し、オフィスの使われ方を分析することが先決だ。つまり、働き方のモニタリングが必要になる。
それにより、どんな設備・空間をどの程度用意すればよいのかがわかる。また、一旦用意した後も、モニタリングは必要だ。オフィスが適切に使われているか、従業員のニーズに合致しているかをチェックしなければならない。
これからのオフィスに求められるのは、従業員のニーズや状況の変化に応じて常に進化し続けることだと言える。従業員に多様な働き方の選択肢を与え、自由度を維持し続けるには、定期的あるいは継続的なモニタリングと改善が不可欠だ。
これを、IoTで実現しようとする取り組みが始まっている。
ABWの効果を引き出すWeb電話帳「連絡とれるくん」等を提供するPhone Appliは、2018年2月に開設した新オフィスで、働き方改革に役立つ新技術・サービスの検証を行っている。
センサーを活用した取り組みの1つが、社員の位置把握だ。
Wi-FiまたはBluetoothビーコンによって従業員の位置情報を取得。誰がどこで働いているかをリアルタイムに可視化する。Wi-Fiの場合は三点測位によって社員のスマートフォンの位置を、ビーコンの場合は名札に付けたタグの位置を測る。
従業員の位置情報はWeb電話帳やマップ上に表示される。下の画像のように、エリアごとの混雑度、会議室の利用状況も一目瞭然だ。
Phone Appli「居場所わかるくん」でオフィス内の各スペースの
在席状況を可視化。使いたいスペースの混雑度がひと目でわかる
働き方の自由度を高めるには、この仕組みが欠かせないと話すのは、取締役 技術統括 SFDCアライアンス事業部長の岩田泉氏だ。
Phone Appliのオフィスでは、まさにABWが実践されている。「最もパフォーマンスが発揮できるオフィス」をコンセプトに、仕事内容に応じて選べる様々なゾーンが設けられている。2~4人でコラボレーションするための「ファミレス」、レイアウトを簡単に変えられて多人数のセミナーも行える「パーク」、集中作業用の「パーソナルワーク」などだ。
ただし、場所が選べるようになった反面、話したい相手を見つけにくかったり、話せる状態にあるのかがわかりにくかったり、空いている場所を探すのに手間がかかったりと弊害も出る。そうしたなかでも社員の居場所を可視化することで「最もパフォーマンスを出せる場所を選び、そしてコミュニケーションを活性化する」(岩田氏)ことを可能にしている。
Phone Appli 取締役 技術統括 SFDCアライアンス事業部長 岩田泉氏
なお、この仕組みは、連絡とれるくんのオプションサービス「居場所わかるくん」として、昨年から顧客向けに販売を開始した。エイベックスの新オフィスに全面採用されるなど導入が広がっている。