IoTとAI技術を背景に今後の成長が期待される「スマートホーム」市場。2017年に経営コンサルティングファームのA.T.カーニーが発表した調査レポート「スマートホーム・ビジネス戦略構築の必須条件」によれば、世界のスマートホーム市場規模は2025年に2630億ドル、2030年には4000億ドルを超えると見込まれている(図表)。全家電製品市場の40%以上に達するという予測だ。
スマートホームとは、家電や住宅設備がインターネットに接続し、スマートフォン等から統合的に制御したりすることで快適な暮らしを実現するものだ。図表でも市場をいくつかのカテゴリーに分けているように、多様なアプリケーションで構成される。なかでも、日本市場で成長の軸になりそうなのが「利便性と快適性」「セキュリティ」の2つだ。
図表 アプリケーション・カテゴリー別によるスマートホームの市場規模
スマートホーム市場の当面の成長を引っ張る2軸利便性と快適性とは、スマートフォン/タブレット端末やスマートスピーカーから家電・住宅設備を操作したり、温度/人感センサー等と連動して空調を自動制御したりするアプリケーションのことだ。こうした機器・設備制御のオートメーションをベースに、生活をより便利・快適にするサービスが市場の中核を成すと考えられる。
一方、ホームセキュリティの需要も顕在化している。防犯カメラやドア・窓の開閉センサー、スマートフォンから鍵を開閉でき、電子化した鍵の受け渡しも行えるスマートロックのニーズが高まってきている。
イッツ・コミュニケーションズ「インテリジェントホーム」のアプリ画面。
家電の動作、センサーの検知情報が一覧でき、操作やルール設定等が行える
2015年から国内でいち早くスマートホームサービス「インテリジェントホーム」の提供を始めたCATV事業者のイッツ・コミュニケーションズ(以下、イッツコム)で執行役員 IoT推進プロジェクト担当を務める武田浩治氏は、「ニーズが高いのはセキュリティ。賃貸物件、新規分譲住宅の両方でスマートロックが浸透してきている」と話す。鍵を持ち歩かなくてもスマホさえあれば鍵の開閉を行えるほか、一定時間が過ぎたら施錠するオートロック機能等が安価に使えることから「デベロッパーや集合住宅オーナーが差別化のために欲しがる」状況だ。
イッツ・コミュニケーションズ 執行役員 IoT推進プロジェクト担当の武田浩治氏(左)と、
IoT推進プロジェクト スペシャリストの林田丈裕氏