NTT、B2B2Xの世界展開へ試金石――デルと米ラスベガス市でIoTの実証実験

NTTグループが、米ラスベガス市でデルテクノロジーズと公共安全ソリューションの実証実験を始める。B2B2Xモデルのグローバル展開加速に向けた「エポックメイキング」な取り組みだ。

澤田純氏の「社長昇格人事」が正式発表される10日前の5月1日、NTTグループはデルテクノロジーズと共同発表を行った。米ラスベガス市で、公共安全ソリューションの共同実証実験を9月から開始するという発表だ。

その意義について澤田氏はこう述べた。「NTTはB2B2Xを提唱しているが、今回は海外で初めてパートナーと組んでやるケース。その意味では、非常にエポックメイキングで、戦略を拡張していくための契機になる」

NTTは2018年3月期までの中期経営戦略で、「利益成長」のための柱を3つ挙げている。1つは設備投資の効率化やコスト削減による「国内ネットワーク事業の効率化・収益力強化」だが、今回の発表との関連が深いのは残り2つの柱、「グローバルビジネスの拡大・利益創出」と「B2B2Xビジネスの拡大」である。

B2B2Xとは、「センターB」と呼ぶサービス提供者の「触媒役」として新たな価値創造をサポートするモデルのこと。今回の取り組みは、そのB2B2Xの世界展開の重要な一歩であり、グローバルビジネスの拡大を目指すNTTグループにとって、大事な試金石となる。

NTT 代表取締役副社長(当時)の澤田純氏
NTT 代表取締役副社長(当時)の澤田純氏(左)と
Dell EMC サービスおよびデジタルIT担当プレジデントのハワード・エライアス氏

事件・事故をAIで予測澤田氏によれば、ラスベガス市で実証する公共安全ソリューションには3つの特徴がある(図表1)。

図表1 公共安全ソリューションのコンセプト[画像をクリックで拡大]
図表1 公共安全ソリューションのコンセプト

1つめは「迅速な事件・事故対応(リアクティブ)」である。監視カメラなどのセンサー情報を、監視区域近隣のマイクロデータセンター(エッジ)で分析。事件・事故を迅速に検知し、警官や消防車の派遣、一斉アナウンスなど素早い対応を実現する。

2つめは「予測対応(プロアクティブ)」だ。トレンド分析と様々なソースのセンサー情報を活用し、混雑や逆走、事件性の高い事象などをAIが予測。事件・事故が起こる前の対応を可能にする。

そして、3つめは「迅速で効率的なICTリソースの配備」だ。NTTのオーケストレータ技術とデルテクノロジーズの仮想化技術などを組み合わせた「コグニティブ・ファウンデーション」という仕組みによって、ユーザーの既存のICTリソースも含めて、構築・設定と管理・運用を一元的に行うことができるという(図表2)。「現場の通信システムやお客様のシステムがどんなものであれ、オーバーレイでソリューションをかぶせられる」(澤田氏)

図表2 コグニティブ・ファウンデーションの概要

監視区域の近隣に置くマイクロデータセンターにも特徴がある。「トランクくらいのサイズで、イージーセットアップできる。『多くの人が集まるイベントが来週あるから、監視ソリューションが必要』となっても、普通は全然間に合わない。しかし、これは1日、2日でセットアップして持って行くことができる」と澤田氏は説明した。

Dell EMCでサービスおよびデジタルIT担当プレジデントを務めるハワード・エライアス氏が強調したのは、「フルのエンドエンドソリューションを提供できる」という点だ。

Dell、Dell EMC、VMware等を擁するデルテクノロジーズは、ハイパーコンバージドインフラからIoTゲートウェイ、NFV、ストレージなど、IoTに必要な製品をトータルに提供可能だ。その豊富な製品群と、NTT研究所のAI技術やオーケストレータ技術、NTTデータやディメンションデータのインテグレーション力、NTTコミュニケーションズのデータセンターなどが組み合わさる。「『いろんなものをインテグレートして届けられる点を買っている』とラスベガス市のCIOは私たちに話している」(澤田氏)

月刊テレコミュニケーション2018年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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