国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の中核を担っている組織は、「第2のIT部門」であることがIDC Japanの調査で分かった。
「第2のIT部門」とは、DXの専任組織のこと。具体的には「社長直轄等の専任部門または専任子会社」を「第2のIT部門」と想定している。
DXにすでに取り組んでいる国内企業に、DXに中核となって取り組んでいる組織を聞いたところ、「第2のIT部門」が27.9%で最多だった。
DXの実行組織の状況。「第2のIT部門」にあたる上2つの選択肢を
DXの「中核組織」に選んだ回答者の割合は27.9%と最多だった
次いで多かったのは、「組織横断プロジェクトチーム」(17.7%)と「事業部門」(17.4%)。既存の「情報システム部門や子会社」がリーダー組織となっているケースは13.1%で、「思ったより少ない」とIDC Japanの國土順一氏は語った。
また、國土氏は、「組織横断プロジェクトチーム」が中核を担っているケースについて、「損益責任が明確ではないため、将来的には『第2のIT部門』に移行していくのではないか」と指摘した。
破壊的・横断的な新事業創出が「第2のIT部門」への期待既存の組織ではなく、「第2のIT部門」がDXをリードしている企業が多いのはなぜか。
その理由は、デジタル化の目標に関する回答結果に表れている。
「既存事業の生産性・効率向上(運用プロセスなど)」「既存事業のビジネスモデルの改革」などが上位に挙がるなか、「第2のIT部門」がリードする企業で多かったのが、「破壊的な新事業の創出(データ活用など)」と「事業部門横断的な新事業の創出」の2つである。
既存の組織では実現困難な目標を達成するため、「第2のIT部門」を組織した企業が多いことが分かる。
また、「第2のIT部門」がリードする企業では、DXを担う組織の業務範囲として、「企業買収/ベンチャー投資」や「社外ステークホルダとの連携(エコシステム構築等)」が多く挙がったのも特徴の1つ。「外に向かった業務範囲が多くなっている」(國土氏)。
「第2のIT部門」を設置している企業の59.6%は、5段階あるDXの成熟度でステージ3以上となっており、國土氏は「トップのリーダーシップ」「CDOの設置」とともに、「第2のIT部門」の設置を「DXをうまく加速させるための3点セットの1つ」と説明した。
このようにDXの重要なカギとなる「第2のIT部門」だが、実は「第2のIT部門」設置のピークは2~3年前に過ぎている。「2015年をピークに、新しい組織化は減っており、現在はだんだん実行の局面」に入っており、「国内企業のDXの取り組みは、後半戦へと突入した」というのが國土氏の見方だ。つまり、これからDXへの取り組みを本格化させる企業は、大きく出遅れている。
今回の調査では、DXを実行していない企業が約4割いることも分かっている。いまだDXに具体的に取り組んでいない企業はどうなるのか――。「このまま行くと、早々に“退場”を余儀なくされるのではないかと、非常に危惧している」と國土氏は述べた。