「トラフィックは凄まじい勢いで伸びている。当社ではこれを経営課題として捉え、対処を進めている」
U-NEXTの経営戦略室・経営企画Gで担当部長を務める柿元崇利氏はそう語る。「トラフィックの伸びが激しくなったのは(2015年の)Amazonプライム・ビデオとNetflixの上陸から。2016年末頃にはエンジニアチーム、そして経営層からも『抜本的に手を入れないとマズい』という声があがり始めた」という。
同社の定額制動画配信サービス「U-NEXT」は、国内で最も早い2007年にテレビ向けでスタートした。その後、PC、スマートフォン/タブレット、PS4等のゲーム機向けにも拡大。GEM Partnersの調べでは、国内の定額制動画配信市場でシェア3位(金額ベース、2016年)につける。
契約者数とトラフィック量の詳細は公開されていないが、最新の決算発表資料によれば、契約者数はこの3年で2.4倍に増加。直近1年間では36%増(2016年9月から2017年9月)という。トラフィックもこれに比例して増えるわけだが、動画の高画質化も相まって、契約者の増加ペースを上回る勢いでトラフィック量が増えているようだ。
図表1 動画配信サービス「U-NEXT」のシステム概要
オリジンを国内数拠点に分散トラフィックが急激に増えれば当然、配信システム等の設備投資・運用費が高騰する。
さらに、U-NEXTでは昨年、早急に対処が必要な課題も持ち上がった。ネットワーク容量の逼迫だ。
ユーザーが視聴する動画は、コンテンツが置かれているオリジンサーバーから、ISPや通信事業者のネットワーク経由で全国へ配信される。柿元氏によれば2017年の年初頃、「このペースでトラフィックが増えれば、オリジンとインターネットとの接続がキャパシティ上限を超えてしまうことが分かった」という。
そこで、従来は1カ所だったオリジンのトランジット(インターネットへの中継接続)を「2カ所以上のTier1プロバイダのバックボーン」に分散した。2017年10月から段階的に移行を始めてトラフィックを分散。総キャパシティも増やした。昨年末頃には、その効果が「はっきりとわかるほどになってきている」という。
とはいえ、これでトラフィック対策が完了というわけではない。U-NEXTではさらなる対策を実施および検討している。
U-NEXTは3年前から配信プラットフォームの開発・運用を“自前主義”にシフトした。データセンター運用からネットワーク接続、モバイル用アプリの開発まで、すべてを社内エンジニアが行っている。トラフィックの動向やユーザーの視聴形態を詳細に把握することで、傾向やニーズの変化を迅速に捉えて対応するのが狙いだ。