2017年9月1日、電波法施行規則等の一部を改正する省令が施行され、ついに日本のモバイルキャリアが「LTE-M(Cat.M1)」と「NB-IoT(Cat.NB1)」を商用展開するための制度整備が完了した。
LTE-MとNB-IoTは、IoT(Internet of Things)を契機に、需要が高まっているIoT向け無線ネットワーク「LPWA(Low Power Wide Area)」の一種だ。
LPWAは通信モジュールと通信料金の安さ、そして省電力性能が大きな特徴として挙げられる。膨大な数のセンサーを利用するIoTビジネスに取り組む企業にとって、安くて省電力性能に優れたLPWAは待望の通信手段なのだ。
LPWAには、すでに商用利用可能な「Sigfox」や「LoRa/LoRaWAN」もある。これらは無線局免許が不要な周波数帯を利用する「ノンセルラーLPWA」だが、それに対して「セルラーLPWA」のLTE-MとNB-IoTは、免許が必要な周波数帯を利用する(LTE-MとNB-IoTの違いなどはPart2で述べる)。
LTE-MもNB-IoTも、標準化仕様の策定自体は2016年6月に完了していたものの、日本国内で免許申請するための前提となる技術基準の制度化はまだだった。しかし前述の通り、総務省による制度化が完了。同省は9月1日から免許手続きの申請を受け付け始めた。
これから3キャリアは順次申請を行い、無線局の運用認可を得てからLTE-MとNB-IoTの商用サービスを開始することになる。
商用サービスは2017年度内に「免許申請の手続きは進めている。時期は確定していないが、年内にも認可が下りて、晴れて商用の電波を出せるようになるだろう」。こう明かすのは、ソフトバンク テクノロジーユニットIoT事業推進本部 プロジェクト管理課課長の朝倉淳子氏だ。
「いつからどのエリアで展開するかはまだ言えないが、2018年度に向けて着々と準備中だ。認可が下り次第、順次全国展開していく。LTE-MもNB-IoTも両方提供する」という。
ソフトバンクより、少し早めの商用サービス展開を表明しているのはKDDIだ。「2017年度内のどこかのタイミングで商用サービスを全国に向けてリリースする。総務省から認可を得てからのスタートになるが、LTE-MとNB-IoTの両方を準備している」と、同社ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長の原田圭悟氏は説明する。
そしてNTTドコモは、「低カテゴリLTE通信技術を、2017年度中にドコモネットワークへの導入を目指す」と昨年発表しており、現在もその予定だという。ただ、ドコモの言う「低カテゴリLTE通信技術」には、すでに商用化されているカテゴリ1(Cat.1)に省電力技術を組み合せたものも含まれる。つまり、ドコモはLTE-M/NB-IoTの商用サービスを2017年度中に開始するとは明言していない。
とはいえ、もちろんセルラーLPWAの免許申請手続きをはじめ、ドコモも着々と準備を進めている。同社ネットワーク部 技術企画部門 担当部長の宮下真一氏は「お客様のIoTソリューションに適したネットワークを、LTE-MやNB-IoT含めてベストミックスで提供していく」と前向きだ。