データセンター(DC)では今、ネットワークの構築・運用法が大きく変わっている。オープンソースソフトウェアと汎用ハードウェアを目的に応じて組み合わせる形態へと移行することでコストを削減し、かつアジリティを向上させる手法が主流となりつつある。
狙いは、ソフトの開発スピードを向上させ、新たなテクノロジーを低コストかつ迅速に導入できるようにすることだ。クラウド事業者やWeb事業者が自ら開発したソフト(その多くがオープンソースとして公開される)を汎用ハード上で稼働させ、それを実現している。
こうした流れは、SDN/NFV化が進むキャリアネットワークにも確実に浸透していくはずだ。
無線・バックホールもホワイトボックス化注目すべき動きが、Open Compute Project(OCP)とTelecom Infra Project(TIP)だ。OCPはFacebookが中心となって立ち上げた、DCを主ターゲットとするプロジェクトだ。オープンなサーバーやホワイトボックススイッチ等でDCインフラを構築することが目的である。購買力のある大手Web事業者が中心となることで新興ベンダーを集め、さらにエリクソンはじめ大手ベンダーやAT&T等の通信事業者も参画し、オープンソースを軸とした新たなエコシステムを形成している。
このOCPの“テレコム版”が、TIPだ。こちらもFacebookが主導して2016年に立ち上げられたもの。OCPによるハードをキャリア設備に適用することで、コスト削減と新技術の迅速な導入を目指す。具体的には、無線基地局や、バックホールに使われる長距離光伝送装置等を“ホワイトボックス化”する。
TIP参画企業は8月時点で40社。インテル、ノキア、ジュニパーネットワークスといった大手ベンダー、Tモバイルやテレフォニカ、SKテレコムといった事業者も名を連ねる。
Telecom Infra Project(TIP)はFacebookのCEOであるザッカーバーグ氏の提唱によって立ち上げられた。現在40社が参画し、Access Project、Backhall Project、Core and Management Projectの3つのプロジェクトが進められている |
TIPがターゲットとしているのは、光ファイバーや無線アクセス設備が普及していない新興国だ。資金力のない事業者でも低コストにモバイルブロードバンドを構築できるようにすることでインターネットユーザーを増やせば、それがFacebookの顧客層拡大につながるわけだ。
したがって、TIPのハードが直ちに日本で採用される可能性はない。ただし、キャリア設備のコモディティ化が加速することの影響は大きい。
NTTソフトウェアイノベーションセンタの分散処理基盤技術プロジェクト・主任研究員で、キャリア設備におけるコモディティハードウェアの活用を研究テーマとする藤田智成氏は「我々もこうした動きに乗っていかなければならない。」と話す。「オープンソースの開発などで、彼らとコラボレーションしながら業界の動向を捉え、コモディティハードウェアの検討を進めている」という。