「ウェアラブルデバイスを業務に活用するのはまだ先の話」。そんな認識でいる企業は2016年、競合他社に大きく出遅れてしまうかもしれない。
公になっている事例は少ないが、企業のウェアラブル活用の動きは水面下でかなり活発化し始めているからだ。
「例えば、日本の自動車業界では、すでに9割の企業が何らかの形でメガネ型のウェアラブル導入に向けて準備をしている」。そう語るのは、ガートナー ジャパンのリサーチ部門テクノロジ&サービス・プロバイダー パーソナル・テクノロジ主席アナリストの蒔田佳苗氏だ。こうした動きがあまり表面化していないのは、「競合他社に知られたくないというのが理由」(蒔田氏)。逆に言うと、それだけ「ウェアラブル導入が業務にもたらすプラスのインパクトは大きい」と考えている企業が多いということだ。
メガネはエリア限定の現場向け実際、これを実証する事例も出始めた。オランダでは、リコーの物流センターを管理しているDHLが、「Google Glass」やエプソンの「MOVERIO」を利用した、倉庫内での「ビジョンピッキング」システムをパイロット導入。これにより、作業ミスの減少と作業時間の25%短縮を実現すると同時に、顧客サービスレベルの向上にも成功した。
DHLの作業員はこれまで、ピッキング対象商品が記載された帳票とバーコードリーダーを手に持ってピッキングしていた。しかし、メガネ型ウェアラブルデバイスの導入後は、メガネに映し出される情報をもとにピッキング対象商品のロケーションと数を把握。商品バーコードは付属カメラで読み取ることで、ピッキング作業全体をハンズフリー化し、先の導入効果を得た。
ウェアラブルデバイス市場をグローバルで見ると、最も歴史が長いのはメガネ型だ。米軍では、10年ほど前から機器のメンテナンスや情報収集などの用途で利用している。