SMB市場開拓を担当する、NTT東日本のビジネス開発本部第二部門が、店舗やサービス業をターゲットとした業種特化型のソリューション提案を進めている。SMBクラウド担当で担当部長を務める高橋幸一氏は、「当社の回線やWi-Fi、遠隔サポート、クラウドといった汎用的な商材をうまく活用してもらえるようなサービスを、各業界のトップブランドの方と協業しながら開発し、彼らの商流で売ってもらうモデルを構築している」と話す。
現在、NTTグループ各社は「BtoBtoX(BおよびC)」型の事業モデルへと転換を進めている。NTT東のSMB市場開拓に向けたこの施策も、まさにその流れに則したものだ。
具体例の1つが、理美容業界をターゲットとした、タカラベルモントとのアライアンスである。同社は理美容椅子メーカーの最大手。セットミラー/シャンプーユニットといった理美容業向け機器や化粧品、さらにはサロン向けのPOSシステムも手掛けており、東日本エリアだけでも約14万店舗ある(総務省統計による)とされる理美容サロン業界に深く食い込んでいる。
理美容室向け最大手とタッグこのタカラベルモントと組むことで、独立・新規開業の理美容サロンにNTT東のICT商材を売り込む。切り込み役の商材は、小規模サロン向けの簡易型POSだ。NTT東とタカラベルモントが共同で、iPadとアプリで低コストに導入・利用できるクラウド型POSシステム「SALONPOS Lite」を開発した。これにフレッツ光、クラウド型Wi-Fiサービスの「ギガらくWi-Fi」を組み合わせ、タカラベルモントの営業が新規開業店に販売する。
タカラベルモントとNTT東日本が共同開発し、2015年4月から販売を開始した iPad用タブレットPOS「SALONPOS Lite」。右は予約管理画面 |
この協業は、タカラベルモントが抱えていた課題も解決する。同社が従来から販売しているPOSシステム「SALONPOS LinQ」は、大規模店や多店舗展開しているような大手美容室向けのもので、新規開業サロンに売れる手軽な商材を必要としていた。このニーズにマッチしたのが、NTT東の「ラクレジ」だ。初期費用0円、月額3000円で利用できるタブレットPOSアプリで、これに理美容サロンで必要な機能を付加してカスタマイズしたものをタカラベルモントにOEM提供したのがSALONPOS Liteなのである。
これを販売して開業時ユーザーのPOS 率を高め、その店舗が成長した際にはSALONPOS LinQへの乗り換えを促すのがタカラベルモントの狙いだ。同社は製品ラインナップに欠けていた穴を埋めることができ、一方でNTT東は理美容業界の新規開業の動きを捉えて回線、Wi-Fi、アプリをセットで販売することができる。
SALONPOS Liteは、予約管理/顧客管理機能のほか、POSレジ機能、売上管理 機能などを備えている |
NTT東の狙いはそれだけではない。タブレットPOSは「理美容サロンのICT化のあくまで入口」と高橋氏は話す。
SALONPOS Liteは、クロスフィード社製のサロン向けクラウド型ネット予約システム「Reservia」、コイニー社のクレジット決済サービス「Coiney」、マネーフォワード社のクラウド型会計システム「MFクラウド会計」との連携が可能だ。
自社商材だけでなく、さまざまなパートナーのサービスもAPIで連携し、連動が可能なように仕立てている点が、今回の取り組みの重要なポイントだ。予約から決済、会計と、業務の最初から最後まで一気通貫でICTを活用した美容室の運営ができるようになる。「理美容サロンの業務基盤に入り込めるモデルをタカラベルモントさんと一緒に作り上げた」のだ。