マイクロソフトはサティア・ナデラ氏のCEO就任以降、大胆な路線転換を行い、クラウドを軸とした戦略にシフトしている。「全人類の生産性を向上させる」という同氏が掲げたコーポレートビジョンの下、Windows OSをコアとしたモデルから、クラウドプラットフォームを軸として顧客価値を提供するモデルへと転換を進めているのだ。
この戦略転換は、日本市場における法人事業、「Office 365」や「Skype for Business」によるワークスタイル変革提案を主軸としたビジネスにも当然、大きく影響する。
代表執行役社長の平野拓也氏は7月の経営戦略発表で、「ワークスタイル変革のリーディング企業になる」ことを重点分野の1つに掲げた。そのうえで、2017事業年度(2016年7月から2017年6月)にクラウド関連の売上高を法人向けビジネス全体の50%まで引き上げる計画だ。
その実現の鍵となるパートナー施策についても、クラウドサービスを取り扱いやすくするための新たなパートナー制度を開始。新規パートナー1000社の獲得を含め、2016年6月までにクラウドパートナーの体制を3500社に拡大するという。パートナーも巻き込んだ“クラウドシフト”を加速させようとしている。
絶好調のOffice 365日本マイクロソフトのクラウド戦略はどこまで進んでいるのか。業務執行役員でアプリケーション&サービスマーケティング本部 本部長を務める越川慎司氏は、「この1年半で、ソフトウェアの会社からクラウドの会社へと完全に変わった」と話す。
最も大きな変化は、マイクロソフトが顧客に価値を提供する基盤となる“プラットフォーム”の在り処が変わったことだ。つまり、従来はWindowsやOfficeといったユーザーの手元にあるデバイス/OS、ソフトウェアこそが価値提供の基盤として存在していたが、それがクラウドに移ったのだ。越川氏は次のように話す。
「以前のように『Windowsありき』ではなく、現在は、プラットフォームである我々のクラウドを使いやすくするためにデバイスやOSがあるという構造。だから、iPadやiPhone、Androidでも我々のクラウドサービスが使われているし、クラウドサービスが最も使いやすいデバイスとは何かという発想でSurface Pro等のデバイスを開発している」
そのクラウドサービスのラインナップは3つ。IaaS/PaaSの「Microsoft Azure」と、SaaSのOffice 365、Dynamics CRM Onlineである。
このうち、ワークスタイル変革提案の主軸となるのがOffice 365だが、国内販売も「絶好調」だ。「クラウド市場全体の成長率は、調査会社のデータによれば27%程度とされているが、Office 365はその3倍程度で成長している」という。
図表 日本におけるOffice 365の状況 |
その理由の第1に越川氏が挙げたのが、2015年12月から東日本と西日本の2エリアで稼働した国内データセンターだ。これにより、海外にデータを移動することに難色を示す官公庁や金融機関等でもユーザー獲得につながった。もちろん、Azure、CRM Onlineの販売にも大きく貢献している。
グローバルではすでに売上の3割をクラウド関連で占めているが、日本国内でもほぼ同様と考えると「2017年に売上の50%をクラウドに」という目標は十分に視野に入る。
とはいえ、法人向けクラウド事業に注力するライバルは多い。その中で今後も高い成長率を維持していくためのポイントは(1)クラウドの価値訴求、(2)パートナー施策の拡充だ。次回はまず、(1)クラウドの価値訴求の観点からマイクロソフトの戦略を解説する。