ビル・ゲイツ氏やTCP/IPを開発したロバート・カーン氏、携帯電話を初めて作ったマーティン・クーパー氏とともに、世界で初めてIoT(Internet of Things)の概念を提唱したことと組込OSとして普及しているTRONへの貢献により、国際電気通信連合(ITU)の創設150周年を記念して設けられた「ITU150 Award」を受賞した坂村健教授。
坂村教授によれば、“今”のIoTを理解するうえで重要なことは「オープン」と「ガバナンス管理」だ。また、これらのことは、日本が世界的にIoTでプレゼンスを発揮するために欠かせないポイントだという。
閉じたIoTからオープンなIoTへ「インターネット」や「PC」などと同じように、世の中に普及すると世界的に確信されているIoTだが、「重要なトレンドは、閉じたIoTからオープンなIoTへ流れていること。ここを理解しないといけない」と強調する。
インターネットには、TCP/IPのルールに従えば誰でも参加できるオープンさがある。「発展途上国だろうが、民主主義でない国であっても繋がる。このインターネットのいいところを閉じられた組込デバイスの世界、すなわちモノの世界にいかに取り込み、オープンにしていくか」
インダストリー4.0とトヨタのかんばん方式の違いはオープンの度合い |
部品から組み立て、販売までの全ての現場がネットワークで繋がり、高効率かつ柔軟な多品種少量生産が可能になるという製造業向けIoTのコンセプトは、日本ではすでに1970年代からトヨタの「かんばん方式」で実現されている。「インターネットのないときからトヨタはIoTのコンセプトを展開してきた。ただ違う点は、“トヨタのグループ企業に限られる”ところ」
グループ内に閉じたかんばん方式を全ドイツ、さらには全世界で繋げようというのが「インダストリー4.0」だと坂村教授は述べる。インダストリー4.0というと、すでに何らかの設計書・仕様書があると考えてしまう人もいるがそれらはこれから作っていくものであり、現時点ではドイツの産業競争力を維持するためのビジョンにとどまっているという。そして、そのビジョンをひと言で表現すると“オープンなかんばん方式”であり、ドイツが決めた方式で製造業界を繋ぎ、世界でイニシアチブを取ろうとしているというのだ。
また、ドイツのインダストリー4.0とともに話題になっているアメリカの「インダストリアル・インターネット」は、建設機械の情報を遠隔で確認するコマツの「KOMTRAX」をオープンにしたものだと説明する。