すべてが「個別対応」ゆえに膨らむIoTのコストと運用負荷インヴェンティットは、「あらゆるものをインターネットにつなぎ、管理していくこと」を目的に掲げたテクノロジーベンチャーだ。目黒氏の表現を借りれば「リモートから『何か』を管理するのが得意な会社」となる。
「それがモバイルデバイスならばMDM(Mobile Device Management)になるし、その他のさまざまなモノであればIoTになる」。特に、クラウドベースの企業向けMDM「MobiConnect」では100万台以上の端末を管理している実績があり、拡張性に優れていることが特徴だという。
あらゆるモノやデータ、プロセスがインターネットにつながり、新たなサービスの創出や効率性の向上といったメリットをもたらすIoT/M2M時代の到来は間違いないだろう。だが一方で、「実態との間にギャップを感じることもある。弊社にもIoT関連のトライアルに関する問い合わせが増えているが、新たに多数の開発が必要だったり、ルールが決まりきっていない部分があったりで、決して簡単ではない」というのも、率直な感覚なのだそうだ。
インヴェンティット IoT事業開発 マネージャー 目黒学氏 |
このような現状にはいくつかの要因がある。
例えば、IoTの世界で使われるデバイスは多種多様だ。そのため、どうしても個別の開発が必要になる。つまり開発が「多重化」してしまう。「現在のデバイスのインターフェイスはLANだったりシリアルだったりといろいろあるし、OSも組み込み用LinuxやWindowsの他、リアルタイムOSなどさまざまなものが使われている。加えて、その上で動作するアプリケーションについても考えねばならないため、どうしても機器ごとに個別の開発が必要になってしまう。既存のソリューションを使おうにも改修は不可避だし、中には流用できないこともある」
そのデバイスとつながり、管理を行うサーバもばらばらだ。「現在のサーバは個別に作られており、機器ごとに画面が乱立する状態になってしまっている。機能の追加や拡張を行いたくても、接続先やロジックをなかなか自由に変更できない」。それを実現しようとすればやはり開発作業が必要となり、その分コストもかさむことになる。
IoT機器の運用管理にも課題が残る。機器本体に加え、アプリケーションやファームウェアのアップデート、障害対応といった要素が求められるが、「例えば、データが上がってこないときにどこに原因があるのか。サーバか、受信機か、それとも機器本体か……と、原因を切り分けできる整備を整えていないと悲惨なことになる。運用管理面を考えておかないと、かえってコストがかかってしまう」
開発に関しては、PCの世界とは桁違いの拡張性が求められ、それがまた開発の負担を増すことになる。「『最初はテストのため5~10台程度で動かすけれど、将来的には数千台規模に拡張したい』というケースでは、あらかじめスケールを考えておかなければならない」。それも、ニーズに応じた他サービスとの連携・変更を可能にする拡張性や運用管理に目を配った形で実現する必要がある。
加えてセキュリティも大きな課題だ。「ソフトウェアだけで実現するのは無理で、サーバや通信、クラウド、モバイル機器やその上で動くファームウェア、さらには物理的なセキュリティも含めて実現していく必要がある」と目黒氏は指摘する。
つまり「IoTの世界では、上から下まで、関わってくる登場人物が多い」。それらに個別に対応していこうとするために、コストや運用負荷をはじめとするさまざまな課題が生じているという。