IoT/M2Mの潮流に乗り、ビジネスを伸ばそうとしている企業は数多いが、組み込み開発と業務システム開発をコア事業とするマイクロテクノロジーもその1社だ。既存事業をベースとしながらIoT/M2Mに取り組んでいる。
ここ2年、実績を積み重ねてきたのがテレマティクスの分野だ。「組み込み開発の技術・知見と社内のリソースを上手く活かせる分野としてIoT/M2Mのビジネスを進めてきた」と、営業本部長兼IoT事業推進室長を務める執行役員の石松頼昌氏は話す。
マイクロテクノロジー 執行役員 営業本部長 兼 IoT事業推進室長の石松頼昌氏
同社はECU(エンジン電子制御ユニット)開発支援ツールをはじめとする自動車向けの組み込み機器/ソフトウェア開発を事業の柱としており、自動車制御の土台となるCAN(Controller Area Network:車載ネットワーク)から情報を取って見える化し、そのデータを機器制御や管理に用いるノウハウを持っている。
これと通信回線、M2Mアプリケーションを組み合わせて、業務車両の走行履歴管理や車両診断、メンテナンス等を行うフリートマネジメントサービスを国内外で展開中だ。一般的な車両以外にも、建設機械や船舶の積荷など適用範囲は広い。
また、テレマティクス以外にも、M2Mの適用先とアプリケーション開発の範囲が広がってきているという。「昨年は実証実験の話が多かったが、2015年からは本番稼働になりそうだ」と石松氏は手応えを口にする。
193カ国500以上のキャリア対応のKORE社と提携同社のIoT/M2Mビジネスにおいて最大の差別化ポイントとなっているのが「M2M 専用SIM」だ。世界各国の通信キャリアと接続可能なグローバルM2Mプラットフォームを持つ米KORE Wireless社と独占パートナーとして提携し、KORE社のSIMを使ってM2M特有の課題を解決している。
1つが通信料金の安さだ。最近はMVNOを中心に通信容量・速度を制限した安価なSIMが増えているが、その中でも最低水準の月額300円でSIMを提供している。テレマティクスで利用するデータ量は月間1MBもあれば十分なため、料金を低く抑えられる。車両・走行履歴管理や通知といった機能を利用するためのサービス料980円と合わせて、車両1台あたり1280円で提供している。
テレマティクスサービスの運行情報画面
2つめが接続キャリアの豊富さだ。KORE社はMVNOおよび買収によって自社のM2Mプラットフォーム「PRiSM Pro」と多数のキャリア回線を接続する戦略を進めている(図表)。
図表 KORE Wireless社のサービスイメージ
193カ国500以上のキャリアと接続が可能で、世界各国の2G/3G/LTE、衛星回線を目的に応じて単一プラットフォームで利用できる。なお、KORE社の顧客は現在1500社、350万のデバイスにSIMを提供しているという。
そのため、日本企業が海外にM2Mを展開する場合にも、回線の開通・休止・閉鎖をPRiSM Pro上で一元管理できるほか、請求やサポート窓口等も集約できる。複数キャリアと個別に契約するのと比べて管理が容易で、運用コストの削減に大きく貢献できる。
NTTドコモが加盟するM2M World Allianceのように、各国キャリアが提携してM2Mサービスを提供する動きも広がっているが、その場合でも回線開通・閉鎖等のオペレーションまで一元化するのは難しい。一方、KORE社の場合はMVNOとして各キャリア回線と接続し、PRiSM Proで管理できるため、機器や車両の利用状況に合わせて回線を一時的に停止したり再開することが可能だ。通信料金の値付けも柔軟にできる。
実はKORE社は日本のキャリアと直接接続しておらず、マイクロテクノロジーのテレマティクスサービスのユーザーも国内で車両管理を行う場合は、シンガポール・テレコム傘下の豪オプタスの回線等を使用している(ローミングでドコモ網を利用)。
「いつでも止めたり再開できて、ワンストップでサポートが受けられるのが受けている」と石松氏は話す。