KDDIは2015年5月12日、2015年3月期通期の連結決算を発表した。営業収益は前年度比5.5%増の4兆5731億円、営業利益は同11.8%増の7413億円で2期連続の2桁成長を達成した。
個人向けのモバイル通信収入が751億円増加したことと840億円の販売手数料の削減が増益に大きく貢献した。他方、au WALLETの立ち上げなどで個人向け事業部門のコストが889億円増加、法人向け事業が減収・減益となったことなどから全体の増益幅は781億円にとどまった。
田中孝司社長は、モバイル通信収入が伸びた要因の1つとして、2012年から提供している固定・モバイルのセット割「スマートバリュー」の効果をあげ、「解約率の低下により安定した顧客基盤の確立に寄与している」と述べた。
3月末時点でKDDIのスマートフォンユーザーの5割、FTTH加入者の6割がスマートバリューに加入しているという。CATVの多チャンネルサービスを対象に加えたことで、傘下のJ:COMをはじめとするCATV会社による携帯電話の販売が増えた。
田中社長は、特に第4四半期のMNP純増数や解約率が好調な数値を示していることを示し、「国内のモバイル事業における同質化が進む中、auのモメンタム(勢い)は順調に推移している」と説明。スマートフォンの普及に伴って、低下傾向にあった携帯電話の通信ARPUが通期で上昇に転じたことも明らかにした。
今期以降の事業展開については、「マルチネットワーク」「マルチデバイス」「マルチユース」の3つの要素からなる3M戦略をさらに推進していくとし、「マルチネットワーク」の具体策であるスマートバリューによって拡大した顧客基盤の上で、「マルチデバイス」と「マルチユース」の取り組みを本格化させる方針を打ち出した。
「マルチデバイス」ではタブレットなどの複数端末の利用を促進する。これに伴い現行のARPU(契約回線当たりの売上)に代わる新たな経営指標ARPA(アカウント当たりの売上)が導入される。
マルチデバイスを推進し、通信ARPAの拡大を目指す |
「マルチユース」の取り組みでは、KDDIが展開する「auかんたん決済」「au WALLET」の2つの決済プラットフォームを活用し、現在の付加価値事業の中心となっているオンラインサービスに加えて、金融サービスとコマースの2事業領域を強化、「付加価値経済圏」を拡大する。これにより、auかんたん決済、au WALLETの流通額を2016年3月期に前期の倍に相当する8600億円に拡大する計画だ。付加価値ARPAも19%増の500億円とする。
金融・コマースを強化し、付加価値経済圏を広げていく |
また2016年3月期には営業利益を前期比11%増の8200億円とし、2013年の3カ年中期目標で掲げた3期連続2桁成長の実現を目指す。