携帯3キャリアのLTEネットワーク戦略(1)NTTドコモのLTE戦略「周波数資源を最大限に活用し、広く・速く・快適なLTEへ」

NTTドコモはLTEネットワークの投資を前倒しし、2014年度中にサービスエリアを3G相当に拡大する。同時にLTE帯域の拡大と基地局資源の有効活用でネットワーク容量を高め、トラフィックの増大に備える。

昨年のiPhone 5s/5cの導入を機に、NTTドコモの販売実績が回復基調に入ってきている。「巻き返し」とまではいかないが、流れは明らかに変わってきた。

iPhoneという強力な商材がラインナップに加わったことと、もう1つ見逃せないのが、iPhoneの導入に合わせてドコモがLTEインフラの大幅な強化を図ってきていることだ。取り組みは多岐にわたるが、とりわけ大きなインパクトがあったのが、iPhone 5s/5cの発売と同時にスタートした1.7GHz帯での下り最大150Mbpsの高速データ通信の提供である。

1.7GHz帯をすべてLTEに切り替え、圧倒的な通信速度

下り最大150Mbpsは現行のLTEシステムの最高スペックだが、これを提供するには3G携帯電話(W-CDMA/HSPA)の5MHz幅(実際には送信、受信用の1組の電波が使われるので、以下5MHz×2という形で表記する)の電波4波分、20MHz×2もの広い周波数幅が必要となるため、提供できている事業者は世界でもまだ少ない。

ドコモは3Gのトラフィック対策に使ってきた1.7GHz帯で20MHz×2を東名阪地区限定で割り当てられており、今回この帯域をすべてLTEに切り替えることで150Mbpsの高速サービスを実現したのだ。

もっともiPhone 5s/5cは、端末側の最大通信速度が100Mbpsまでとなっており、実際に「150Mbps」のサービスが利用可能になったのは、150Mbps対応のAndroidスマートフォンが発売された10月になった。

ドコモはこのサービスを都心部から展開しており、12月末時点で東京の山手線全駅の周辺や六本木、名古屋市の中心部、大阪の環状線の駅周辺などで利用できる。トラフィックの集中するこれらの地区はLTEでも速度が出にくいが、ドコモのiPhone 5s/5cは1.7GHz対応機のユーザーが少ないこともあり、50Mbpsを超える劇的なスループットを実現。雑誌やWebメディアにも取り上げられた。

図表 NTTドコモのLTEネットワーク展開(クリックで拡大)
NTTドコモのLTEネットワーク展開
LTE基地局数は、総務省ホームページの無線局情報検索から得られた2013年11月23日現在の免許数。利用開始前の局も含まれる。同一局が複数の帯域幅で免許を得ている周波数帯などでは帯域幅別局数の合計が実際の局数より多くなるため累計を出していない。ドコモの800MHz帯の5MHz幅LTE基地局は3Gと運用周波数が同一で判別が困難であるため、10MHz幅局の数のみを示した。

ドコモがこうしたアグレッシブなサービスを実現できた理由の1つが、2013年9月末時点でドコモユーザーの4分の1強、1640万がすでにLTEに移行しており、1.7GHz帯の20MHz×2をまるごとLTEに切り替えても、3Gユーザーの通信品質に大きな影響を及ぼさない状況になっていたことだ。

ドコモによると、同社が「2トップ戦略」などでLTEスマホの拡販を進めてきたのには、3GユーザーのLTE移行を進めて3G用帯域を空けて、LTEで本格的に戦える環境を作る狙いもあったという。

マルチバンド基地局アンテナ
1本のアンテナエレメントで現行の4帯域と2015年から利用が可能になる700MHz帯に対応するマルチバンド基地局アンテナ。都市部で順次導入が進められている

LTEへのユーザーの移行の進展により、1.7GHz帯以外の帯域でもLTE展開が加速している。ドコモは主力バンドとして展開する2GHz帯でも、LTEの帯域幅を当初の5MHz×2、1車線分から順次2車線分の10MHz×2に拡大、下り最大37.5Mbpsの最大通信速度を75Mbpsに向上させている。ドコモは、LTEの通信環境を大幅に底上げした上でiPhoneの導入に踏み切ったといえる。

月刊テレコミュニケーション2014年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。