sXGPでクレーン無線の混信抑制 NEC通信システム・竹中工務店が開発

高層ビルの建設には、資材運搬にクレーンが欠かせない。そのオペレーターと吊り荷の掛け外しを行う作業員の音声連絡に用いる「玉掛合図無線システム」をNEC通信システムと竹中工務店が開発した。

高層ビルの建設では、資材を吊り上げるためにタワークレーンが使われる。この吊り荷のワイヤーロープなどをクレーンのフックに付け外すことは「玉掛(たまが)け」と呼ばれる。安全にクレーン作業を行うには、クレーンのオペレーターと吊り荷側の玉掛け者が緊密に連絡を取り合うことが必要だ。

現在一般的に使われている連絡手段は、同時通話型の特定小電力(特小)無線機である。免許不要で使えるのがメリットだが、竹中工務店 西日本機材センター 開発グループ チーフエンジニアの松原拡平氏は都市部では混信が起きやすい点を課題に挙げる。

竹中工務店で従来使用してきた、400MHz帯を用いる特小システムのチャネル数は最大12。自分の現場だけであれば十分なチャネル数だが、高層のクレーンからは電波が1kmほど先まで届くことがあり、工事が集中する都市部では近隣現場などとチャネルの共有が避けられず、「近隣の無線との混信が頻繁に起こる」と松原氏。無関係な音声やノイズによる聞き取りづらさが作業の安全性を脅かしている。

竹中工務店では様々な代替手段を検討してきたが、いずれも決め手に欠けた。携帯電話網は施工中の上層階では圏外になることが多い。交互通話型のトランシーバーは同時通話ができず、発話時にボタンを押す必要があるため、両手を空けたまま吊り荷の位置を細かく調整する玉掛け作業には適さない。ローカル5Gは音声通話主体の用途には性能が過剰で、免許取得も必要になる。

sXGPと専用アプリで大幅改善

そこでたどり着いたのがsXGPだ。竹中工務店はNEC通信システムと共同で、sXGPを利用した「玉掛合図無線システム」を開発。2021年ごろにNEC通信システムが竹中工務店にsXGPを紹介し、2024年から本格的に同システムの開発に着手。実証を経て、2026年に実運用を開始した。 sXGPは1.9GHz帯を使うTD-LTEベースの自営無線システムだ。使用にあたって免許は不要で、スマートフォンを端末として利用できる。Wi-Fiと比較し干渉を受けにくく、少数のアクセスポイントで半径50~500m程度の通信エリアを構築できる。LTE方式の高い周波数効率を活かし、多数の端末を同一ネットワークに収容でき、通話グループごとに無線チャネルを割り当てる必要がない。

工事の進行に伴い鉄骨や壁が増える建設現場では、見通しが遮られても通信を維持することが重要だ。sXGPの1.9GHz帯は、Wi-Fiの2.4GHz帯以上と比べ、電波が障害物の裏へ回り込みやすく、環境が変化する現場を安定してカバーしやすい。

システム構成を図表に示す。玉掛け作業を行う地上と、タワークレーンおよび施工中の上階にそれぞれアクセスポイント(AP)を設置し、sXGPの通信エリアとする。地上と上階のネットワークはLANケーブルで接続し、スマートフォンを使って相互に通話する。専用のグループ通話システムを開発し、発声から相手側で聞こえるまでの遅延を約0.2秒に抑えた。

図表 玉掛合図無線システムの構成イメージ

図表 玉掛合図無線システムの構成イメージ

複数の現場での検証では、従来の特小無線機で問題となっていた混信やノイズを大幅に抑え、音声を明瞭に聞き取れることを確認した。

sXGPのAPにはAce Networks製の屋外対応製品を採用した。試験で約300mの広範囲をカバーできたことに加え、現場の温度や気象条件に対応できることも選定理由となった。

玉掛合図無線システムで用いるsXGPアクセスポイント(Ace Networks製)とコア装置

玉掛合図無線システムで用いるsXGPアクセスポイント(Ace Networks製)とコア装置

通話端末にはグーグルの「Pixel 9a」を採用した。入手しやすく、特定アプリ以外の機能を制限するキオスクモードに対応するためだ。専用端末化により、不具合時の原因切り分けや利用者管理を容易にした。

加えて、NEC通信システム クロステクノロジー部門 クロスイノベーション統括部 プロフェッショナルの谷神敏明氏は「スマートフォンはSoCなどによって音声遅延に差があるが、Pixel 9aは比較したなかで最も性能を満たした」と話す。通話アプリも操作ボタンを絞り、表示を大きくするなど簡素化した。現場から操作方法に関する質問はほとんどないそうだ。

実使用時の専用アプリ画面(出典:竹中工務店資料)

実使用時の専用アプリ画面(出典:竹中工務店資料)

音声デバイスは、有線イヤホンマイク、骨伝導型の無線ヘッドセット、会議用スピーカーなどから、作業内容や利用者の好みに応じて選べる。ノイズキャンセリング機能による騒音低減も作業者から評価されているという。

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