無線アクセス(RAN)制御とAI処理を同一のコンピューティング基盤上で行う次世代通信インフラ「AI-RAN」。これは、携帯電話ネットワークをベースに、AI実行環境を世の隅々にまで行き渡らせるための新たな社会インフラを作ろうというコンセプトだ。

米エヌビディア テレコム事業担当 シニア ディレクタのカニカ・アトリ氏
2024年にエヌビディアと大手通信事業者、ネットワーク機器ベンダー(NEP)らが推進団体「AI-RAN Alliance」を設立してから2年余りが経った。米エヌビディアでテレコム事業担当 シニア ディレクタを務めるカニカ・アトリ氏は、「AI-RANがPoC段階からフィールドトライアルやソリューション化のフェーズに移行している」と商用化に近づいていることを強調する。
AI-RANの価値とは
AI-RANはなぜ必要なのか。
AIアプリケーションを提供する事業者とユーザーには、AI実行環境が拡大、分散することがメリットになる。
AI-RANは、通信事業者が持つ土地・建物、電力といった既存インフラを基盤に、RANとAIを稼働させるハードウェア/ソフトウェア、RANのパフォーマンスを最適化するAI、そしてエッジAIアプリケーションを展開するものである(図表1)。演算リソースはRAN処理へ優先的に振り分けるが、トラフィック量が少ないときには余剰リソースをAI推論やエッジアプリに回す。リソースの共用によってコスト効率が高まるほか、ユーザーの近くで処理するため、リアルタイム性の高いAIアプリが提供できる可能性がある。
図表1 AI-RANを大規模展開するための5層モデル
ただし、通信事業者にとってAI-RANの展開は容易ではない。これまで専用のASICやハードウェアに依存していたRANを、GPU等のAIアクセラレーターとソフトウェアによる汎用プラットフォーム化することは、設備構築・運用の体制変更も伴う大変革となる。それでもソフトバンクやT-Mobileらが推進するのは、大きな可能性を見出しているからだ(図表2)。
図表2 従来のRANとAI-RANの比較

その可能性とは具体的に何か。RANの処理能力はピーク時に合わせて設計されるため、通常時には大幅な余剰が発生する。この余剰リソースを使ってGPUaaSやエッジAIアプリを提供すれば、新たな収益になりうる。RAN設備が、収益創出型の多目的インフラへと変容するのだ。

ノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員 モバイルネットワークス事業部 セールスディレクターの小久保卓氏
ノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員の小久保卓氏によれば、同社のRANを利用する顧客への調査では、AIアプリを提供する「AI on RAN」とエッジコンピューティング基盤として活用する「AI and RAN」への期待が高いことが確認されたという。












