「スタートアップ企業がソーシャルインパクトを起こすうえで、先進的な通信技術が不可欠となる場合がある」
2025年12月16日、東京・御茶ノ水で開催された「ローカル5Gサミット2025」で、キャンパスクリエイト 専務取締役の須藤慎氏はこのように述べた。

キャンパスクリエイト 専務取締役 オープンイノベーション推進部 プロデューサーの須藤慎氏
キャンパスクリエイトは、産学官連携・オープンイノベーションを推進している広域TLOだ。TLO(Technology Licensing Organization)とは、大学の研究成果を産業界に還元することなどを目的した機関のことで、キャンパスクリエイトは電気通信大学の関係者を中心に設立された。
活動の1つとして、東京都「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」の開発プロモーターを担っているが、須藤氏によれば、スタートアップが提供するサービスのポテンシャルをビジネスで最大限発揮する上で次世代通信技術の活用が鍵となるものの「どの通信技術がベストなのか分からない」「通信事業者と関わりを持つ機会が少ない」といった課題を抱えるスタートアップが少なくなく、通信事業者においてはローカル5Gやミリ波のユースケース探索に苦労している面も強いという。
「通信業界特有のこのような状況を解決すべく、産学官連携の経験を生かしてスタートアップと通信事業者をコーディネートしながら次世代通信技術を活用したソーシャルインパクトの創出を目指している」(須藤氏)
須藤氏に続いては、同事業の支援を受けたavatarin、Industry Alphaの2社のスタートアップが登壇し、ローカル5Gを活用した取り組み事例を紹介した。

キャンパスクリエイトが主導する「NEXT5GとSUが導くソーシャルインパクトプロジェクト」
【avatarin】遠隔ロボットとAIの協働をローカル5Gで実現

avatarin ソーシャル・ソリューション部 部長の筒雅博氏
「遠隔操作ロボットとAIをキーテクノロジーに、人とAIが高度に協働できる社会インフラを構築していきたい」。avatarin ソーシャル・ソリューション部 部長の筒雅博氏は、こう語った。
同社は、遠隔ロボットを通じて「見る・動く・聞く・話す」とった多様なデータを収集し、相手の気持ちを察する能力を備えたAIの開発を目指しているという。
具体的な取り組みとして紹介されたのが、大阪・関西万博の栃木パビリオンでの事例だ。栃木県内の小中学校から遠隔ロボットを操作し、万博会場を見学する取り組みのほか、東京のオフィスから英語・中国語・日本語の多言語でパビリオン訪問者を案内する実証を行った。「万博会場は大勢の来場者で混雑するため、大容量のデータを低遅延で送受信できるローカル5Gが必要だった」と筒氏は振り返った。
また、東京都大田区と荒川区役所での遠隔行政サービスの取り組みも紹介された。東京・日本橋のオフィスから、各区役所に設置したアバターロボットを遠隔操作し、オペレーター1名が2つの区役所の区民対応を担当した。混雑状況に応じてロボットを切り替えながら運用し、ローカル5Gで複数台のロボットを同時に稼働させる検証を実施したという。
筒氏は、「アバターロボットにとって5Gは最適なインフラだが、まだまだ5Gだけでは足りない。AI・ロボット・通信を融合させることが、次世代のロボットプラットフォームのスタンダードとなってくると想定しているため、今後も6G、そしてその先の通信技術とも連携していきたい」と展望を語った。

遠隔行政サービスでの実証実験の様子
【Industry Alpha】倉庫や工場で活躍するAMRの遠隔操作にローカル5Gが有用

Industry Alpha 代表取締役の渡辺琢実氏
スマート工場・スマート倉庫に取り組むのがIndustry Alphaだ。その実現に向けて、自律走行搬送ロボット(AMR)と搬送管理システム「Alpha-FMS」を開発している。
同社 代表取締役の渡辺琢実氏は、倉庫の自動化について「日本の倉庫は扱う商品や風土などに応じて、それぞれ独自のオペレーションを発展させてきた。そのため、倉庫ごとに自動化の要件は大きく異なる」と課題を指摘した。こうした多様なニーズに対応するため、Industry Alphaではシステムを部品単位で設計し、必要な機能を組み合わせるコンポーネント設計により、現場に適応したシステムを提供しているという。
一方で、通信環境の確保に課題がある。AMRは倉庫内の広い範囲を移動しながら、搬送管理システムと常時通信する必要があるが、渡辺氏は「これまで広範囲を移動しながら通信するロボットは存在しなかったため、既存の通信インフラでは対応が難しいケースが出てくる」と話し、最新の通信システムを適材適所で使用していく必要性を説明した。
特にAMRの遠隔操作については、「ロボット搭載のカメラ映像、ロボットを俯瞰した映像など、複数の映像を見ながら操作するが、通信の遅延が大きいと操作性が悪化する」と指摘し、ローカル5Gのキラーユースケースの1つが遠隔操作になると強調。低遅延が求められる場面でのローカル5Gの有効性を語った。














