――通信と野菜とは意外な組み合わせですが、事業構造についてどのように考えていますか。
小関 我々はモバイルと質のよいリアルビジネスを組み合わせることで、新しい市場を生み出すことを目指しています。
らでぃっしゅぼーやでは、会員の9割が紙ベースの会報誌、1割がWebを利用しています。会報誌の作成には準備も含めて3カ月近くかかるため、事前に商品の調達や値段、プロモーションを決めておかなければなりません。しかし、台風や豪雨などで調達量が変動することから、天候の影響を受けにくいeコマースを強化する計画です。
ドコモが12月に新たに開設するdショッピングへの出店とは別に、らでぃっしゅぼーや本体でもマーケットプレイスを作る計画で、そのために基幹システムの再構築を行っています。
――eコマースでは、ドコモのスマートフォンやタブレットが活用できるのではありませんか。
小関 すでにタブレット端末の共同開発に取り組んでいます。配送員にタブレットを持たせ、会員の自宅玄関でニーズに合った商品を紹介したいと考えています。
一方、会員向けにはアプリかクラウドを使い、タブレットから注文できるようにするほか、紙では紹介しきれない情報も含めたコンテンツを作ろうとしています。当社では年間7000~8000ものアイテムを提供しているのですが、会報誌に掲載できるのはそのうち1000程度にすぎません。残りの“ロングテール”の部分も柔軟に提供していきたいと思っています。
らでぃっしゅぼーや 代表取締役副社長 小関純氏 |
らでぃっしゅ版しゃべってコンシェルを検討
――魅力的なサービスであれば、まだタブレットを持っていない会員が購入するきっかけにもなりそうです。
小関 そもそも自宅におけるタブレットの用途はゲームや映画だけではないはずで、生活に密着したサービスを提供できるかどうかがタブレット普及の鍵を握ると見ています。
その一例として、「しゃべってコンシェル」のらでぃっしゅぼーや版“らでぃっしゅコンシェル”のようなサービスを検討していきます。
ドコモのdショッピングではしゃべってコンシェルで商品を探すことができますが、らでぃっしゅぼーや本体のeコマースでは、冷蔵庫の中にある食材をタブレットに向かってつぶやくと、その食材を活かしたレシピを提案するなど、主婦の方が料理をする際に役立つサービスを提案していきたいと思っています。
――dショッピングと本体のeコマースとの関係はどうなりますか。
小関 dショッピングに出店することで、会員でない方も気軽にお試しいただくことが可能になります。トライアルメニューを用意するので、それで気に入ったら本体の会員になっていただくという流れが期待できます。
――有機野菜の生産者もタブレットを活用できます。
小関 生産者のタブレット活用には生産を支援するシステムと、生産者が持つ付加価値の高い情報を消費者に届けるシステムという2つの側面があります。
前者は、タブレットとクラウドを使い、生産管理や採算性管理など生産者に有益な仕組みを提供するものです。後者は、作物の栽培状況や安全性に対する留意点、農家独自のレシピなど付加価値の高い情報を紹介することで、生産者のブランド価値を高めるだけでなく、引いては当社のブランド向上にもつながります。
――ドコモの持つ顧客基盤はどのように活かすのですか。
小関 ドコモの6000万の契約者に対し、らでぃっしゅぼーやの会員は約10万7000人と大きな差があります。そこで、ドコモのお客様をらでぃっしゅぼーやに送客する仕組みとして、ドコモショップを活用していきます。
11月から、首都圏の約40店舗のドコモショップでトライアルを開始しました。店頭でお客様にらでぃっしゅぼーやを紹介していただき、入会されたら代理店に手数料を支払う仕組みです。代理店にとっても魅力的なビジネスになると考えています。