情報通信研究機構(NICT)は2025年12月22日、国際標準に準拠した光ファイバーを用い、毎秒430テラビットの光伝送に成功したと発表した。国際標準準拠の光ファイバーにおける伝送容量としては世界最高記録となる。

開発した単一モード・マルチモード統合光伝送システム
同成果は、NICTを中心とする国際共同研究グループによるもの。既存の光通信インフラで広く使われているカットオフシフト光ファイバーに対し、新たな伝送技術を適用することで、特定波長帯における伝送容量を従来比で約3倍に拡大した。
カットオフシフト光ファイバーは、長距離光通信で一般的に利用される波長帯において、単一の伝送経路のみが成立するよう設計されてきた。一方、研究グループは今回、長距離伝送ではこれまで十分に活用されていなかった短波長側のO帯に着目。複数の伝送経路(3モード)を同時に用いるマルチモード伝送技術を世界で初めて実証した。
この3モードO帯伝送と、E帯、S帯、C帯、L帯における単一モード伝送を組み合わせ、広帯域WDM(波長分割多重)対応の統合光伝送システムを構築。総周波数帯域幅30.1テラヘルツにわたり、偏波多重QPSK、16QAM、64QAM、256QAMといった多値変調方式を用いて10kmの伝送を行った。
その結果、理想的な誤り訂正を仮定した場合の推定データレート(一般化相互情報量:GMI)は毎秒430.2テラビットに達した。実用的な誤り訂正符号を適用した場合でも、毎秒398.6テラビットの伝送が可能であることを確認している。

理想的な誤り訂正符号の適用を仮定して推定したデータレート(GMI)
NICTはこれまでもマルチモード伝送に取り組み、伝送容量を拡大させてきた(参考記事:光の新波長帯を開拓せよ マルチバンドで既存ファイバーの能力拡張|BUSINESS NETWORK)。生成AIやクラウドサービスの普及を背景に、光通信インフラに求められる伝送容量が拡大するなか、今回の成果は光ファイバーケーブルを新設することなく既存インフラの性能を大幅に引き上げられる点が特徴で、将来の通信需要増に対する経済的な解決策として期待される。













