データセンター(DC)の主役といえば、AIワークロードやアプリケーション処理を行うCPUとGPUだが、その補佐役である“第3のプロセッサー”への注目が高まっている。「DPU」(Data Processing Unit:データ処理ユニット)だ。
DPUは、高速データ処理に特化したプロセッサーである。その特徴を活かしてCPUやGPUの負担を軽減し、DC全体のパフォーマンスを向上させるのがDPUの役割だ。ネットワーク/セキュリティ、ストレージ等の処理を一手に担い、そのアクセスを高速化。CPU/GPUは本来の仕事に専念することができる。
「Smart NIC」とも呼ばれるこのコンポーネントは、ネットワーク機能仮想化(NFV)技術が台頭してきた2010年代から徐々に存在感を高めてきた。Armやエヌビディア、AMDは現在、DPUという名称を用いているが、インテルはIPU(Infrastructure Processing Unit)の名で同様のデバイスを開発・提供している。ハードウェアアクセラレーターとしての機能と特徴は共通しており、本稿では「DPU」の名称で統一することとする。
Arm CPU搭載で用途を拡大
DPUの機能と特徴を整理しよう。
AMDは、CPUに大きな負担をかけていたデータ集約型タスクをオフロードし高速化するために設計された専用プロセッサー、とDPUを定義している。
図表1の左のように、CPUがインフラ管理やセキュリティ、ストレージ、ネットワーク処理を行うと、本来行うべきアプリケーション処理に使えるリソースが減ってしまう。AIワークロードを処理するGPUも同様だ。
図表1 DPUのオフロード機能

それらの処理をDPUが担えば、CPU/GPUは本来の仕事に専念できる(同・右)。「スパコン向けに、CPUに負荷をかけないための技術を開発してきたのが(2020年にエヌビディアが買収した)メラノックスだ。その技術をNICに搭載した」と、エヌビディア エンタプライズマーケティング シニア マーケティングマネージャの愛甲浩史氏は発展の歴史を語る。
従来のNIC(ネットワークインターフェースカード)は基本的な通信機能のみを搭載しており、サーバーが生成したデータをネットワークに流すためのヘッダー処理やデータ分割、エラー処理等はCPUが行っていた。これらをオフロードする機能を拡充するかたちでNICを高機能化。さらに、ArmのCPUを搭載することでインフラ管理やストレージ処理、セキュリティといった汎用的な仕事をこなせるデバイスへと進化してきた。
Smart NICという呼び名は、この進化の過程において従来型のNICとの差別化を図るために生まれた用語と言える。現在の多様な役割を考えれば、DCインフラにおいて高負荷なデータ処理を担う「DPU」の呼び名こそふさわしいと言える。












