A10ネットワークスは2012年11月29日、ADC/ロードバランサーのハイエンドモデル「AX 5630」を発表した。これまで最上位だったAX5200-11と比べて、「ほぼ同じ電力消費量で、倍のパフォーマンスを出せる」(代表取締役社長兼CEOの小枝逸人氏)という。
AX 5630は3Uラックサイズで、40Gbpsインターフェース(QSFP+)を4ポート搭載したアプライアンスだ。希望小売価格は4799万9000円~で通信事業者/サービスプロバイダーが主なターゲットとなる。
AX 5630の概要 |
従来の最上位モデルであるAX5200-11と比較したパフォーマンスは下記のスライドの通りだ。アプリケーションスループットが約2倍の77Gbpsになったほか、L4 CPS(コネクション数/秒)も600万CPSと約1.3倍に向上した。さらにDDoS防御専用のハードウェア「FTA(Fexible Traffic ASIC)2」を4つ搭載し、従来比2倍の最大1億SYN/秒のDDoS攻撃を防ぐことができる。その一方で最大消費電力は890Wと、最大660WのAX5200-11の約1.3倍にとどめた。
従来のハイエンドモデルとの性能比較 |
このように大幅なパフォーマンス向上が図られているAX 5630だが、会見の中でとりわけ強調されたのはSSLの性能についてだ。
グーグルやTwitter、Facebookで常時SSLが実装されるなど、「今では常時SSLで通信を行う“Always on SSL”の時代になっている」とプロダクトマーケティングマネージャーの吉沢建哉氏は指摘。そのうえでSSL高速化ハードウェアの最新版の搭載によって、AX 5630では従来比約4倍の17万4000CPS(2048ビット鍵の場合)の処理が行えることをアピールした。4096ビット鍵でも、5万8000CPSを実現するという。
また、今月21日発表の最新OS「ACOS 2.7.0」の新機能であるSSLインターセプトにより、標的型攻撃などのサイバー攻撃に対する出口対策にも貢献するとのこと。SSLインターセプトとは、SSLで暗号化された通信を平文に復号化して任意のセキュリティ製品に引き渡し、その後また暗号化する機能。
SSLインターセプト機能の概要 |
SSLによって暗号化されたC&Cサーバーとの通信などを、SSLに対応しないセキュリティ製品でも検査できるようになる。また、SSL対応のセキュリティ製品においても、ロードバランサーにオフロードすることでパフォーマンスを向上させられる。
シェアトップのF5に肉薄
会見ではA10ネットワークスの最近の業績についても紹介された。小枝氏によると、3年間で10倍の急成長を遂げているという。
その最大の理由の1つに挙げられたのはスマートデバイスの普及だ。その結果、ロードバランサーにおいては、データ量よりもセッション量が重要になっていると説明。「まさにゲームのルールが変わってきている。F5ネットワークスはデータ量の世界で成長してきたが、A10ネットワークスはセッションの世界で成長してきた」と語った。
また、国内シェアについても、複数の調査会社のデータを示してF5に肉薄していることを紹介。「ほぼ同等のシェアまで近づいている。来年には必ず抜けるだろう」と自信を見せた。