<特集>フィジカルAI、産業DXのためのローカル5Gローカル5Gの得意技は「広域エリアの無線化」 物流・設備監視DXを後押し

Wi-Fiとの比較においてローカル5Gの優位性が明確に発揮されるユースケースの1つが、広域エリアの無線化だ。少数の基地局で効率よく無線エリアを作れる利点が港湾や工場などで活かされ始めている。

広域な敷地の無線エリア化と、高精細映像の伝送──。

Wi-Fiなどの他の無線通信システムと比べた場合に、ローカル5Gの優位性が発揮できる場面として、NTTビジネスソリューションズ(NTTBS) バリューデザイン部 DXプラットフォーム部門 IoTビジネス担当 主査の平田悠樹氏はこの2つを挙げる。

自営無線の導入に当たっては、導入費用の安さや免許不要の手軽さからWi-Fiが選ばれるケースは当然多い。だが、上の2要素のどちらかに該当するケースでは「ローカル5Gでなければ実現できない価値が見えてきている」と同氏。NTTBSが導入を手掛けた2つの事例、夢洲コンテナターミナルと日本海水はまさにその好例だ。

NTTビジネスソリューションズ バリューデザイン部 DXプラットフォーム部門 IoTビジネス担当 主査 平田悠樹氏

NTTビジネスソリューションズ バリューデザイン部 DXプラットフォーム部門 IoTビジネス担当 主査 平田悠樹氏

“物流を止めない”安定性を評価

夢洲コンテナターミナルの目的は、岸壁横幅が西日本最長の1450m、奥行500mのコンテナターミナルの全域(下画像)を隅々まで無線エリア化することだった。

夢洲コンテナターミナルの上空写真

従来は4.9GHz帯無線アクセスシステムを用いていたが、帯域が狭く通信品質の安定性にも問題を抱えていた。コンテナとコンテナの間でつながらないことも多く、新たな無線システム導入を検討。2021年から総務省の実証事業としてローカル5Gの実証を行い、その性能・品質を確認したうえで2024年から本格導入した。

15基のSub6基地局を敷地内に設置し、従来は不感地となっていたコンテナ間も問題なく通信できているという。敷地が広いため、「Wi-Fiで全域をカバーするにはアクセスポイント(AP)の台数と配線コストが膨れ上がってしまう」(平田氏)。電波出力が強く、基地局ごとのカバー範囲が広いローカル5Gなら、広大な敷地全域を効率的にカバーできること、映像伝送も可能な通信速度と品質の安定性が実証で確認できたことが、将来の港湾作業DXを見据えた本格導入の決め手になったという。

また、コンテナ物流は止まることが許されず、通信障害のリスクは最小限に抑えなければならない。Wi-Fiや公衆5Gのように他の通信の影響を受けない点でも、ローカル5Gは適していた。

こうして導入したローカル5G網は様々な用途で使われている(図表)。トップリフター/トレーラー、RTG(門型ガントリークレーン)への運搬順序の遠隔指示や作業内容の登録、ターミナルゲートでのコンテナ入場受付などだ。従来から電波環境のよい場所ではスマートフォン等の端末を使った指示・登録業務を行っていたが、ローカル5G導入後はほぼ全域で利用可能になった。

図表 夢洲コンテナターミナルにおける将来像含む利用イメージ

図表 夢洲コンテナターミナルにおける将来像含む利用イメージ

また、広帯域通信による映像伝送が可能になったことで、ガントリークレーンの操作において、カメラ映像をトレーラーの停止位置判断に活用している。将来的には、RTGのプランニングデータの電子化などさらなる用途拡大も検討されている。

続きのページは、会員の方のみ閲覧していただけます。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。